日本がタイに4-0で快勝し、8強に一番乗りした。前半27分にFW鈴木武蔵(21=新潟)が先制弾。チーム最多タイとなる通算13点目でリードを奪うと、後半4分にMF矢島、同30、39分にはFW久保のゴールで突き放した。2連勝で1次リーグB組2位以上が確定し、各組上位2チームによる準々決勝に駒を進めた。19日の第3戦はサウジアラビアと対戦する。

 FW鈴木が一瞬で相手守備を切り裂いた。MF遠藤からの縦パスを背に前方へ走りだし、頭で前に浮かせる。その落下点に右足の甲を合わせた。「(遠藤)航くんに『裏』って要求したら、いいボールが来た」。股下93センチの足で均衡を破ると、ベンチへ走った。

 父親の母国ジャマイカの英雄ウサイン・ボルトから公認された、ライトニング・ボルト・ポーズが“持ち芸”だが「今日はポグバのポーズです」。ベンチに向かって走ると、サブ組の仲間と喜びを分かち合った。

 14年12月の遠征でもタイ相手に1得点。当時は後半からの出場で決めていた。お得意さま相手に今大会初得点。MF中島に並ぶ手倉森ジャパン最多タイの13点目をたたき込んだ。昨年6月のW杯2次予選・日本-シンガポール戦(0-0)を見て研究したというタイの守備陣を、個で破った。

 我慢して技術を磨いてきた。中学卒業時、群馬県内の高校からも全く声がかからない存在だった。一般入試で桐生第一高に進学。小林勉総監督は「入学時の体力テストはオール(最上級の)S。一方でパスを止めることすらできなかった」。素材が見込まれU-16日本代表に選ばれたが、高校では基礎優先のため試合に出られない。日本協会内で「転校させよう」との冗談まで飛んだほど基礎的な練習を繰り返した。それが、この日のボレーの礎だった。

 昨季も苦しんだ。新潟から水戸に移籍した上、股関節、内転筋など下半身の故障を繰り返した。代表には同11月の平塚合宿で復帰したばかり。我慢を重ねてきた点取り屋は前半だけでお役御免となったが、チームに先制弾をもたらした。

 「自分たちで主導権を握って、ペースをつくれた。やろうとしたことができた試合。グループステージ3勝して、トーナメントに向かっていきたい」。会心の1発を弾みに、リオに向かって一気に突っ走る。【木下淳】