全国高校サッカー選手権に出場中の青森山田が8日、今日9日に埼玉スタジアムで行われる準決勝の国学院久我山(東京A)戦に向けて、静岡・御殿場市内で最終調整を行った。現在4得点を挙げ得点ランク2位タイのMF高橋壱晟(2年)が2戦連発弾を決めて、09年度大会以来の決勝進出に導く。

 もう日本一しか見えない。富士山を背に、セットプレー練習など約1時間半、汗を流した高橋は頂点だけを見つめた。「ゴールを意識してできている。その成果が選手権で出ている」と2戦連発に意欲を見せた。今大会2位タイの4得点で、通算15人目の2年生得点王に届く位置にいるが「狙えるなら狙いにいくんですけど、チームが勝つことが大事。ゴール前では周りを見て、いい判断をしたい」と高橋の両目には「優勝」の2文字しか映っていない。

 前に出る姿勢が高橋を変えた。黒田監督からは練習中にプレーを止められ「パスだけの選手になるな。前へ出ろ」と徹底的に指導されてきた。5日の富山第一戦では、その進化を証明した。後半31分、左へサイドチェンジを敢行した瞬間、ゴール前へ猛ダッシュ。左からのクロスを、走り込んできた高橋が豪快に頭で合わせた。「ゴールへの意識が高まったことで、運動量が増えてゴール前で仕事ができるようになった」と自らの成長に手応えをつかんでいる。

 セットプレーでも貢献する。正確なキックが武器で、CKのキッカーを任されている。久我山の先発平均身長は約171センチに対し、青森山田は約178センチ。GKを除く10人の最長身が176センチの相手に対して、高さの面で圧倒的優位を誇る。「ウチには2人背が高い選手がいるので、合わせてくれれば得点になる」。189センチのDF常田と190センチのDF近藤のツインタワーに目がけて蹴りこめば、自然と得点は生まれる。

 先発唯一の青森市出身で、両親は11日の決勝戦まで観戦に来ない。自らの勇姿を見せるには準決を突破するしかない。久我山は大会前26日の練習試合(40分1本)で0-2と負けた相手だ。「同じ相手に2度も負けちゃいけない」。短い言葉の中に、闘志がたぎっていた。【高橋洋平】