昨年11月の航空機墜落事故で多くの選手らが犠牲になった南米杯王者のシャペコエンセ(ブラジル)が、再建への足跡を残した。終了間際にPKを許し、0-1で昨季のルヴァン杯王者浦和レッズに敗戦。勝利は逃したが、勝負への執念を示した。

 来日メンバー20人のうち今季他クラブから加入した選手が17人。ほぼ寄せ集めだが、結束して勝負にこだわった。後半42分にPKをとられ、8人もの選手が主審に猛抗議。浦和サポーターから大ブーイングを受けてもやめなかった。「亡くなった友人のためにもタイトルが取りたかった」とDFグロリ主将。試合後も納得がいかない数人の選手が審判に詰め寄った。勝利への執念がにじんだ。

 事故で命を落としたMFジウは浦和FWラファエル・シルバの先輩だった。かつてクリチバで共にプレーし、5歳下の後輩を食事に連れ出しては「努力すれば道は必ず開ける。どんなに苦しくても自分を信じて頑張れ」と繰り返した。「ずっと胸に残っている。僕のキャリアでの大事なアドバイスだ」とラファエル・シルバ。亡き選手の遺志は浦和でも生き続けている。

 事故から約9カ月。悲劇から立ち上がる姿は大きな称賛を浴びたが、グロリ主将は「昔のようにはもう2度と戻らない」と胸の内を明かした。クラブは今も悲しみと闘っている。エウトロピオ監督は「(命を落とした)彼らが残していったメッセージは人生を最大限に生きること、つまり自分たちが愛することをやり抜くことだ」と語り、最後まで攻めるサッカーを貫いた。

 試合前にはJリーグ側から各クラブが募金で集めた1068万5919円の目録が贈呈された。試合後は浦和サポーターがポルトガル語の横断幕で「クラブW杯でまた会おう」と送ったメッセージに対し、シャペコエンセの選手がゴール裏に駆け寄りユニホームを投げこんだ。最後は笑顔で、拍手で健闘をたたえあった。【岡崎悠利】