J3参入2年目で昨季3位のアスルクラロ沼津が、開幕戦で快勝した。FC東京U-23に3-0。前半14分、MF谷口智紀(25)が先制し、FW畑潤基(23)とFW坂本修佑(24)が続いた。目標のJ2昇格を実現させるために、意義ある好発進になった。また、前日10日にはJ1清水エスパルス、J1ジュビロ磐田、J3藤枝MYFCも勝利。沼津の白星で、県勢Jリーグ4チーム全勝の週末が約9カ月ぶりに実現した。

 J2昇格を目指す沼津が、会心のスタートを切った。前半14分、DF熱川徳政(22)が右サイドからクロスを上げると、ゴール前は混戦に。ボールの処理に手間取った相手DFの隙を見逃さず、中盤の底から駆け上がってきた谷口が浮き球を頭で押し込んだ。「開幕戦で点に絡めて良かったです」。

 同26分には、ペナルティーエリア内でこぼれ球を拾った畑が、右足で冷静に流し込んだ。後半25分には、昨季JFL奈良クラブでリーグ得点王に輝いた坂本が、熱川の放ったCKを頭でたたき込んだ。先制、中押し、ダメ押し、無失点。理想的な勝ち方で吉田謙監督(48)は「前に行くことを恐れないサッカーができました」と胸を張った

 3・11。大切な開幕戦に加え、特別な思いで試合に臨んだメンバーもいた。主将のMF菅井拓也(26)だ。宮城県出身で、仙台大1年時の7年前、東日本大震災で被災し、父勝己さん(享年47)を津波で亡くした。この日は、試合前に両チームの選手、スタッフ、観客が被災者をしのんで黙とう。菅井は「色々な感情がありましたが、気負いすぎず、(黙とうで)気持ちを整理できました」と振り返った。言葉通り、球際の競り合いをことごとく制し、勝利に大きく貢献した。

 駒沢大出のルーキー熱川は、開幕スタメンで3点目のアシストを決めた。「不安もあった」と言うが、堂々とプレーし、セットプレーのキッカーも務めた。「(CKは)しっかり合わせることができました」。

 最高の勝ち方で、新加入選手も機能した開幕戦。だが、シーズンは長く、J2昇格には2位以内、スタジアムの改修などでJ2ライセンス取得も必要になる。その現実を踏まえ、吉田監督は「攻守の切り替えは、まだまだ良くなります」と気持ちを引き締めた。17日の次節は、ホーム開幕戦で盛岡と対戦。地元でサポーターに連勝を届ける決意だ。【古地真隆】

 ◆県勢J4チーム全勝メモ 沼津がJ3に参入した昨季、4チームが全勝した週末は1度だけある。6月25日、J1第16節では、清水1-0甲府(アイスタ)、磐田2-0東京(ヤマハ)。J3第14節では、沼津6-1東京U23(夢の島)、藤枝1-0C大阪U23(エコパ)だった。