がんばろう広島-。西日本豪雨後、初めての公式戦をホームで迎えた首位サンフレッチェ広島が選手の思いをひとつにしてガンバ大阪に4-0で快勝した。前半26分、FWパトリックが頭で決めて先制。同41分にもパトリックが今季12得点目を挙げた。2トップを組んだFW工藤は今季初ゴール。終始圧倒し続けた完勝だった。

 広島県は100人を超える犠牲者が出た。試合後は「がんばろう広島」Tシャツをまとい選手全員で場内を1周。大変な状況下でも駆けつけた約7800人のサポーターから温かい拍手が送られた。MF青山主将は「勝った後もスタンドを見るとどこか寂しい。サポーターの方も複雑だったと思う。でもお互い『ここから踏み出すんだ』ということを確認し合えたシーンでもあった」と振り返った。

 黙とうをささげ、喪章を着用して臨んだ一戦。試合前のロッカー室では城福監督から「自分たちの行動から広島が変わる。戦う姿勢を見せないといけない」とハッパを掛けられた。青山の地元岡山・倉敷市も大きな被害を受け、被災した広島市安佐北区口田出身のFW渡は、時間を見つけて同地域出身の森重(東京)らとボランティア活動に参加していた。青山は「正直、気持ちの切り替えは難しかった。サッカーを考えることができなかった。でも何か伝えられたらと思って臨んだ」。選手の気持ちは被災地へ伝わったはずだ。

 圧勝で首位キープ。城福監督は「またここから勝ち点を積み上げていく」と誓った。チームにとっても広島県にとっても大きな意味のある1勝。周囲に勇気を与えたかけがえのない勝利となった。【小杉舞】