J2のFC町田ゼルビアが16日、臨時株主総会と取締役会を開き、運営会社・株式会社ゼルビアが第三者割当増資で発行した株式を、サイバーエージェントに割り当てることが決まったと発表した。既に1日に都内で開いた会見で、サイバーエージェントが第三者割当増資で発行した株式の8割を取得して子会社化すると発表しており、町田がサイバーエージェントグループの傘下に入ることが決まった。

サイバーエージェントは、1日の会見の際に第三者割当増資の概要も明らかにしており、町田が新たに発行した普通株式2万2960株を1株につき5万円、総額11億4800万円で引き受けたと発表している。引き受け契約は翌17日に払い込む予定だという。町田は公式サイトで「今回の決定は、J1ライセンスの取得、さらには、より子どもたちに夢をもってもらえるクラブへと飛躍するための経営判断となり、多数の株主の皆様に賛同をいただきました」とコメントした。

またサイバーエージェントの藤田晋社長と中山豪常務取締役が株式会社ゼルビアの取締役に就任し、下川浩之会長と大友健寿取締役社長をサポートすることも決まった。藤田社長は1日の会見の中で下川会長、大友社長を筆頭とした現体制について「2人は優秀な経営者。しっかりしていると思っている。今のところ派遣する人材はいないが、ビッグクラブにしていく中で、人材が少ない部門が出てくる。いれば派遣し全面バックアップする側に回っていきたい」と現体制の維持を約束していたが、自社から中山豪常務取締役を送り込んだ。

町田は、ホームの町田陸上競技場の収容人数が1万328人で、1万5000席以上に設定されている施設基準に満たない上、練習施設の基準に達せず今季はJ1ライセンスが交付されなかった。ホームタウンの町田市は、観戦席を7000席増設する工事を19年に着工、21年の完成を目指し動いているが、天然芝の練習場とクラブハウスという要件が大きな“壁”だった。町田は、その壁を乗り越えるべく、サイバーエージェントの子会社になる道を選んだ。

J1ライセンス取得への大きな壁となっている練習場の確保について、町田は「既に表明させていただいておりますが、練習場の整備に関しましては、株式会社サイバーエージェントよりサポートの確約をいただいております。なるべく早期に着工し、J1ライセンスの取得、そして選手のプレー環境の向上に努めます。また近い将来、東京・町田発世界に通じるビッグクラブへの成長を両者の共通目標にして活動して参ります」とコメントした。

サイバーエージェントの藤田社長は1日の会見の中で、2006年3月に東京ヴェルディ1969(現J2東京ヴェルディ)を運営する、日本テレビフットボールクラブとの業務・資本提携を発表し、日テレに次ぐ2位株主となったが、成績低迷などで2年で撤退した件について聞かれた際「ヴェルディさんの時は、筆頭株主ではなかったので、思うような経営参画が出来なかったので撤退。我々も成長している企業なので規模的にも耐えられなかった」と説明した。

その上で「サッカーをやって、よく分かったのが、やっぱりサポーター、スポンサー、選手、監督の顔色をうかがい続けてもダメで、関係者が複雑で意思が強いために、強いリーダーシップがないとサッカークラブは経営できないと学んだ。ですから今回、かなり大多数の株式取得にこだわった」と8割もの株式を取得した意図を説明。「強いリーダーシップを取らなければ難しい。今回、それを学んで生かした」と強調した。

一方で「町田は驚くほど質実剛健で、作り上げてきたサッカーチームとしての文化、経営陣と監督の優秀さで成り立っている。それを尊重しながら、世界的クラブに持っていくところに、どう描いていくか、という感じ」と町田に可能性を感じていると語っている。