J1ベガルタ仙台が、クラブ創設25周年となる来季のACL(アジアチャンピオンズリーグ)出場を目指す。クラブの目標はリーグ戦トップ5とカップ戦ファイナリストだが、1日現在、ACL出場権となるリーグ戦3位入りと天皇杯優勝の可能性を残す位置につけている。初出場を果たした13年にクラブ史上初のACL弾を決めたMF梁勇基(36)、川崎フロンターレ時代にACLでプロ入り初ゴールを決めたDF板倉滉(21)ら出場経験者にACLの魅力と出場権奪取への意気込みを聞いた。
未知の舞台で、ベガルタの新しい歴史を刻んだのは、やはり、この男だった。
梁 特別な感情とかはなかったが、初戦だったし大事な局面でだったので、決められてよかった。
あれから5年。初出場を果たした第1節のブリラム・ユナイテッド戦(ユアスタ)でクラブの新たな幕開けとなるゴールを決めた男が、あの舞台にもう1度駆け上がる。
梁 札幌、広島、鹿島と上位との直接対決が残っているので、そこで勝てばおのずとACLへの道も開けるし目の前の一戦に集中してやるしかない。
出場権を獲得しグループリーグ敗退に終わったあの苦い経験を払拭(ふっしょく)したい。
梁 クラブの力が試される部分は大きい。固定したメンバーだけでは絶対回せないし選手層の厚みも必要になってくる。コンディションに気を使っても、どうしても疲れは残ってしまうので。日本で試合してアウェーに出て行く厳しい日程だけど、こういう経験ができるのはACLならでは。クラブを挙げてというか会社を含めて戦わないとACLのタイトルを取るには、選手だけでは厳しい部分もある。支えてくれる人たちの力が必要になってくる。
国内リーグで味わえない貴重な経験は、地方の中小クラブにとって大きな糧となる。
梁 タイとか気候や文化も違うし、ああいう経験はなかなか味わえない。クラブとしても海外の大きいクラブと対戦できることは意義がある。クラブチームとして、海外のチームとして対戦するのはACLだけ。移動だけとっても国内とは比べものにならない。中国に行ったときは試合後にシャワーを浴びてそのまま3、4時間ぐらいバスに乗って1、2時間睡眠を取って飛行機に乗って帰ってくる。国内では考えられないしああいう経験はなかなかできない。
アジアを体感し己を知る。その経験値は計り知れない。
梁 粗削りなサッカー、放り込んでくるサッカーを得意とするチームもある。そういう意味では日本でやっているサッカーだけがすべてじゃないと感じたし、それもサッカーやな、と。そういう中でも勝っていかなあかんから、臨機応変に対応する力が、選手として必要。相手に合わせるじゃないけど順応する力。局面だったら個人の力。勝つためにどうしたらいいか考えて実行する力が必要だ。
クラブの成長のためにもACL出場は必要不可欠。改めて高みに挑む決意を口にした。
梁 チームの目標に手が届く位置に、まだいる。モチベーションは大きい。リーグ戦も残り4試合で3位とは6ポイント差。まだまだひっくり返すチャンスは十分あるし、自分たちがどれぐらい本気で目指して取り組むかが大切になってくる。いつまでも「惜しかったね」で終わりたくない。チャンスだし全力で取りに行きたい。
◆板倉(川崎Fに在籍していた昨年、アウェー香港のイースタン戦でプロ初得点)「勢いでプレーできていた2年目とは違い状況判断だったり、頭で考えることも増えたし気持ち的にも迷いが続いていた時期でした。アウェーのスタジアムの雰囲気も独特で新鮮に感じたことを覚えています。広州恒大(中国)戦では世界との差を痛感した。パウリーニョ選手と対峙(たいじ)した時、本当に何もできなかった。ボールを取りに来るときの迫力やスピード、全てにおいての判断のところは違うなと感じました。今は目標のトップ5へ向け、目の前の試合に集中していきたい」
◆MF関口訓充(32=浦和レッズ時代の13年にホームのムアントン戦でゴール。ペナ外からFW興梠に出したクロスがそのままゴールに吸い込まれた)「慎三(興梠)がヘディングで空振ったけど、それが相手のブラインドになった。枠は狙っていたので、あれは俺にしか決められないゴールだね(笑い)」
◆MF矢島慎也(24=浦和に在籍していた昨年に優勝を経験。ベンチ入りも不出場。準々決勝の川崎Fとの第2戦でFW興梠の同点ゴールをアシストし4-1で勝利。第1戦を1-3で落としており大逆転勝利に貢献した)「相手が川崎Fだったので新鮮さはありませんでしたが、攻めるしかない、2-0でも勝てない状況を乗り越えてベスト4進出できてモチベーションが上がりました」
◆DF蜂須賀孝治(28=ルーキーイヤーの13年、中国・南京で行われたアウェー江蘇舜天戦で公式戦初先発しホーム初アシストをマーク)「あっという間に時間が過ぎてきついというより充実感があって楽しかったです。練習場へ移動するバスがフェンスにぶつかって何もなかったように普通に走り去ったり、いろいろな国の文化に触れることができた。サッカーじゃないところでの経験もできるし、出られるなら絶対に出たい」
◆DF金正也(30=ガンバ大阪時代の11年にメルボルン・ビクトリー戦で公式戦初出場)「Jリーグにはいないレベルの選手とも対戦でき、サッカーのスタイルも違うチームと戦った。めちゃくちゃ楽しかったです」
◆13年大会の仙台の戦跡 手倉森誠監督時代の12年にリーグ戦2位となり出場権を獲得。グループリーグでFCソウル(韓国)、江蘇舜天(中国)、ブリラム・ユナイテッド(タイ)と対戦しアウェーで2分け1敗。ホームで1勝1分け1敗と1勝しかできず敗退。
◆ACL AFC(アジアサッカー連盟)チャンピオンズリーグの略称。クラブ・ワールドカップ(W杯)出場をかけた、02年から始まったアジアクラブ王者を決する戦い。日本ではJリーグ上位3チーム及び、天皇杯優勝チームが翌年の出場権を得る。上位3チームに天皇杯優勝クラブが含まれていた場合はリーグ戦4位のチームがプレーオフに進出。グループステージ出場32チームを8グループに分け、各グループで2回戦総当たりのリーグ戦を行う。各グループ上位2チーム(計16チーム)によりノックアウトステージが行われホーム&アウェー方式のトーナメント戦を行う。優勝賞金は400万ドル(約4億4000万円)。07、17年に浦和、08年にG大阪が優勝。