米女子サッカーリーグ(NWSL)のシカゴ・レッドスターズから神奈川県2部の男子チーム「はやぶさイレブン」に期限付き移籍した元日本代表FW永里優季(33)が10日、入団会見を行った。プロとして日本サッカー協会(JFA)に登録された女子選手が男子の第1種(一般・大学)チームに登録されるのは初めて。会見での永里の主な一問一答は以下の通り。

-今の心境は

永里 (報道陣を見渡しながら)こんなに注目されるとは思っていなかったので、びっくりしています。こうして人前に出るのも久しぶりなので、緊張しています。FIFAの(ツイッター)アカウントだったりがすごくこのチャレンジを大々的に伝えてくれたので、海外の人たちにとっても、ものすごく社会的には意味のある移籍だったのかなと感じています。

-加入にあたって

永里 本当に試合だったり、しっかり練習をしてみないとわからない部分はあると思いますが、ずっと昔からいつか男子のリーグでプレーしてみたいという気持ちがあって、いかに近づけるかを目標にしていたのもありました。このレベルでチャレンジという意味では、全くできないというイメージは頭の中になくて。やってみてできる、できないことが近くにイメージできる状態にあるかなと思いますし、今の自分のパフォーマンス、コンディションが歳を重ねるにつれて上がってきていると思うので、このチャレンジができることを楽しみにしています。

-男子の中に入ることはいつから具体的に検討していたのか

永里 米国に渡ってからですね。去年、一昨年くらいから心境であったり、体に変化を感じるようになりました。去年に入って、世界的にも(米国代表MFの)ラピノーが訴えていた社会的格差であったりのメッセージを受けて感銘を受けていました。自分も何か発信できないかとずっと考えていて、今回は少し形が違うかもしれませんが、男性のチームに入って、女性も挑戦できるんだというメッセージを伝えたい。今、男の子の中に混じってやっている女の子もいると思いますし、ひとつの選択肢を作ってあげられるかなという思いをもって、クラブ関係者の受け入れ態勢もあって実現できました。

-海外クラブをプロとして渡り歩いたことも大きかったか

永里 プロになっていなかったらこうした気持ちは感じていなかったと思うし、当事者意識を持って、何かを変えていくようなアクションを起こしていかないといけないなと感じるようになりました。

-地元の厚木市でプレーすることの意味は

永里 ずっと世界を渡り歩いてきて思ったのは、そのチームに所属する地元出身の選手を見るたびにすごくうらやましい気持ちがありました。そういった地元でプレーする場があるというのはすごく子どもたちにとっても夢の舞台になると思いますし、一番目指しやすい環境になると思います。20年間、厚木市に育てられたというのもあるし、この歳になって地元に何かを還元したいという思いが強くなっていったと思うので、今回タイミング良く貢献できる機会をもらったことに感謝していますし、これまで得てきた経験はいつかのタイミングで返したいというものがあったので。厚木市への思いは兄と同じくらいあると思います(笑い)。

-今回の移籍は兄妹もいるということもあり、永里さんからオファーしたのか

永里 はい。私の方から提案させていただきました。

-男子の中で通用すると思うプレーは

永里 フィジカルの部分はどうしても劣ってしまうと思うので、ポジショニングや細かい駆け引きだったり、なるべく激しいコンタクトを受けないプレーは海外でも学んできました。ワンタッチゴールや相手のコンタクトを受けないスペースを見つけるのは武器にできると思うので、そのあたりはやりながらやっていきたいと思います。

-男女が融合して活動するのは歴史に残ることだと思うが、今まで男子とプレーして感じてきたことや、今後女子が入ってくる時に必要だと思うことは

永里 チームメートが女子で対戦相手が男子という環境と、男子の中に女子が1人入るのはまた環境が変わってくると思います。想像の中の話になりますが、(代表合宿などで)大学生までしか相手にしていないですが、全くやれないという感覚は正直なかったので。そのイメージもあったし、男子の中でやれば、いろいろと助けられて自分の良さもまた出るんじゃないかというイメージは持っています。

-米国でのコロナ禍がきっかけにもなったと思うが、考え始めた経緯は

永里 今年の7月に入ってからぐらいです。米国でのトーナメントが終わってからのスケジュールが発表されていなくて、なかなか思い切ってプレーできる環境がなかったというのと、その環境に疲れていた自分がいたので。環境を変えることを考えた時に、地元のはやぶさイレブンでプレーするのはどうかなというアイデアが浮かんできたので、提案させていただきました。

-なでしこリーグ復帰の可能性だったり、来年は女子リーグのプロ化、東京オリンピック(五輪)もある。単刀直入に東京五輪出場は考えていないのか

永里 正直、このことしか頭になかったというか。自分の欲求というか、今、何をしたいのかということを焦点にしたときにこの選択が一番にきたので。そこ(五輪)に自分が絡んでいくイメージもまだ沸いていないので。それはまあ代表の人たちとの兼ね合いもあるので、まずは今のこのチャレンジを楽しんでいきたいというのがあるので。そこまでは考えていけてないです。

-影響を受けたとおっしゃっていたラピノーら米国代表選手らから具体的にどんな刺激を受けたのか

永里 去年のワールドカップ(W杯)前後の言動であったり、試合中のパフォーマンス全てを含めて、勝つだけを目的としていない、実現させたいことへの目的を持ってプレーしている姿をみてすごく刺激を受けていました。彼女のW杯後の活動もそうですし、実際に会って話したこともありますが、本当に人柄が良くて気さくな人でした。世界を動かすようなことをしている人でも誰にでもフラットに接しているのを見て、私もそういう存在になりたいなという憧れもありました。そのことがさまざまなエネルギーになっていたということです。

-今回は期限付き移籍で、再び米国でのプレーに戻ることになると思うが、今回の挑戦はJリーグでプレーしたいという夢への第1歩のチャレンジなのか。それともどこまできるかという約3カ月間のチャレンジになるのか

永里 実際、この期間でチャレンジすることを経験しないと次のことは見えてこないと思うので。このチャレンジで何を感じるかで次のプランが変わってくると思っています。もちろんこのクラブに関わっていくのはこの先もという思いもありますし、それが選手としてかどうかはわからないですが、この短期間だけではなくて、長期的な目線で力になれればと思います。