Jリーグは19日、来季からホームタウン規定を一部緩和することでクラブ側と合意したと発表した。ホームタウン外でのサッカークリニックやイベントの開催、ショップなどの事業展開などが可能になる。地域密着というホームタウンの原則は堅持し、ホームゲームは従来の規約通り、8割以上を本拠地で開催する。多様化する時代の変化に合わせ、各クラブの活動やアイデアが地域外でも発揮されることになりそうだ。

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解説 Jリーグには以前から「東京でいろんな事業を可能にしてほしい」との要望が多く届いていた。首都・東京はFC東京の本拠地で、23区などでイベントや営業事業などを展開するにはFC東京の許可が必要だった。地方クラブでも東京に本社を構えるスポンサーもあるし、最も人が集まる東京は魅力的な場所だ。神戸がイニエスタを前面に出して東京で事業を展開することもできなかった。

しかし他のクラブが事業計画を立てても、最終的にFC東京の許可が下りないと、最終段階まで進んだ企画であっても、結局はあきらめざるを得ないことも多々あったという。また、千葉県の銚子市や成田市には鹿島のサポーターが多くいる。過去にこの市の市長選では「鹿島アントラーズを(イベントやサッカースクールなどで)呼ぶ」と公約した候補もいる。鳥栖は隣接する福岡県久留米市でもスクールを展開したいが、福岡の許可が必要だ。

ホームタウンのハードルが下がったことで、今後は全国各クラブが東京でサッカースクールやサッカー教室、営業活動などのイベントを開きやすくなった。イニエスタが東京でサッカー少年と触れ合うことも可能となる。

新型コロナウイルスの影響で、ほとんどのJクラブは財政面で窮地に立たされている。今回の決定は、Jリーグの「コロナでみんな苦しい今の状況をみんなで力を合わせて打開していこう」と音頭を取り、それに応えたFC東京の決断が大きかった。世界が苦しむコロナ禍。クラブの垣根を越えた試みで乗り越えれば、日本社会にも好影響を与えることになる。【盧載鎭】