J2で18位のヴァンフォーレ甲府がPK戦を制し、初優勝を飾った。J2勢としては、11年度のFC東京以来11大会ぶりの快挙。J1リーグで現在3位、ルヴァン杯優勝に王手をかけているサンフレッチェ広島を相手に番狂わせを演じた。これでアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の出場権も手にした。

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甲府の吉田達磨監督(48)は少し困ったように、笑みをこぼした。「本当はうれしいです。なかなか表現出来なくて、申し訳ないです。疲れてます、少し(笑い)」。そう話すのも無理もない激戦で初優勝を果たした。

1点リードの後半39分に追いつかれ、延長戦では相手にPKを献上するピンチ。絶体絶命の場面をGK河田のファインセーブで乗り越えると、PK戦にもつれこむ熱戦を制した。「本当に平凡な、ただただ小さなことを、選手が忠実に実行してくれた。選手たちに感謝したい。彼らにつかませてもらった。僕自身も初タイトル」。天皇杯を大事に握り締めた。

17年に、当時J1だった甲府の監督に就任するも、J2降格という苦渋を味わった。翌18年も低迷が続き4月に解任。ゴール裏のサポーターから直接厳しい声も浴びた。「地獄でした(笑い)。でも、言いたい気持ちも分かりました」。それからずっと、甲府への思いが胸にあった。「甲府が好きなので。好きなことに理由なんてないですよね。山梨に帰ってこられて、とにかくこのクラブで優勝できて良かった」。4年前に置いてきたものを、タイトルという最高の形で手にした。

J2では現在18位に低迷するが、アジア最高峰の舞台であるアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の出場権をつかんだ。「甲府はいろんな奇跡の中にいる。今日も奇跡かもしれない。5年後10年後、これが奇跡かどうかは、これからの道のりにかかってると思う」。00年には債務超過が発覚し、存続の危機を乗り越えた過去がある。クラブの軌跡に新たに残したものは、きっと奇跡ではない。