今季限りでの現役引退を表明していた元日本代表DF槙野智章(35)が26日、所属するヴィッセル神戸の本拠地・ノエビアスタジアム神戸で会見し「ボロボロになるまではできなかった」と正直な胸の内を明かした。

浦和から加入した今季はJ1リーグ戦で16試合1得点。前半戦こそ先発に絡んでいたものの、後半戦以降は故障もあってベンチ外、もしくは途中出場がほとんどになった。

「夏以降、ケガをした後のパフォーマンスは全く納得いくものを出せなかったです。自分のせいで負けた試合、失点に絡むこともありました。その中でボロボロになるまで、情けない姿を見せることはあってはならない。どうにか(情けない姿を)見せないように、もがいていた自分がいた。それは自分らしくはない。積極的に(サッカーを)楽しんでいた自分とは真逆だった。ケガ明けくらいから(引退を)思い始めました」

神戸は残留争いに巻き込まれたこともあり、自問自答する日々があったという。

「(敗戦が続けば)罵声を浴び、中指を立てられ、物を投げられるのが当たり前だと思っていた。でも(神戸のサポーターは)『よく頑張った』と手を振ってくれた。それが神戸の良さであり、もしかすると良くないところかも知れないです。今後、タイトルを取る、強くなるためには、あえてプレッシャーをかける行動が、もしかしたら必要かも知れないのかなと思った」

日本代表としても多くの経験をした選手だった。

「挫折した試合を挙げるとすれば、2018年のワールドカップ(W杯)1次リーグの第3戦、ポーランド戦(0●1)です。準備をしてきたものが出せなかった。(終盤、日本が勝利を放棄したパス回しをしたことで)いろんな厳しい声があった中で、小さい頃から夢見た試合でそういう結果を出してしまった。痛い敗戦であり、挫折。そういう記憶があります」

会場にはテレビカメラ9台。約50人の報道陣が詰めかけた。

◆槙野智章(まきの・ともあき)1987年(昭62)5月11日、広島市生まれ。広島の下部組織から06年トップ昇格。ケルン(ドイツ)を経て12年に浦和へ。ACL優勝などに貢献し、22年神戸入り。Jリーグのベストイレブンは3度受賞。日本代表は10年にデビューし、17年ブラジルとの親善試合でDFとして日本初の得点者になった。西野朗監督が率いた18年W杯ロシア大会ではベスト16進出に貢献した。182センチ、77キロ。

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