全国高校サッカー選手権に出場する浜松開誠館(静岡)は、31日の初戦で大津(熊本)と対戦(埼玉・駒場スタジアム、午後2時10分)する。4年ぶり2度目の出場となるチームの顔触れを連載する「浜松開誠館 新しい景色へ」の最終回は、背番号「10」をつけるMF前田康尋主将(3年)。今年6月からチームを束ねてきた頼れるキャプテンが同校の全国初勝利に向けてピッチを走り回る。

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悔しい敗戦が前田を奮い立たせる転機になった。今年5月の県総体で優勝した磐田東にPK戦の末に敗れた。前田はPK戦でシュートを外し、チームも敗戦。試合翌日の選手間ミーティングで話し合い、1つの決断に至った。主将の交代-。県総体までキャプテンだったMF松本大樹(3年)に代わり、主将に指名されたのが前田だった。「正直、僕でいいのか何日も悩んだ。でも、やるしかないと思った」。サッカー人生で初だという大役を務める覚悟を決めたが、苦悩の連続だった。

県総体後に再開したプリンスリーグ東海では名古屋U-18Bに0-4。主将として臨んだ「初陣」で大敗した。前田は「逆にそこで吹っ切れた。チームを変えるしかなかったし、そのためにはまず自分を変えることから始めた」。率先して意見することも苦手だったが、時には厳しい言葉で仲間を鼓舞。「いつも誰かの陰に隠れているような」性格も変え、練習から常に先頭に立つことを意識した。

プレーでは主戦場の左サイドで走り続けた。「うまくもないので、とにかく体を張ることだけ考えた」。主将の奮起でチームの雰囲気も徐々に変わった。リーグ戦や県選手権で重ねた勝利で結束力も高まり、自然と闘う集団になった。

周囲の支えも大きかった。「みんながいなければ続けられなかった。この仲間でしかできないことを成し遂げたい。1試合でも多く戦って優勝する」。まず目指すのは全国初勝利。その先の新しい景色を見るために、前田は走り続ける。【神谷亮磨】(おわり)

◆前田康尋(まえだ・やすひろ)2004年(平16)6月16日、浜松市生まれ。小3からジュビロSS浜松でサッカーを始め、中学時代は浜松開誠館中でプレー。家族は両親、姉2人。166センチ、60キロ。右利き。血液型A。

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