古豪の復活劇は幕を閉じた。12年ぶり出場の国見(長崎)が、4強入りした04年度大会以来のベスト8進出を逃した。

「二度あることは三度ある」とはならなかった。1、2回戦はともにPK戦で勝利。この日も1-1でPK戦に突入したが、2人が失敗。前年王者の青森山田に屈した。

試合後、木藤健太監督(41)は冷静な口調で話した。「国見は12年ぶりにこの舞台に帰ってきた。青森山田さんとこういう舞台で試合ができるっていう喜びはすごく感じました。お客さんもたくさん入ってくれて」。負けた悔しさを胸にとどめ、ただ感謝した。

伝統だった丸刈り頭も、携帯電話禁止のルールも撤廃した指揮官。片道6キロ、往復12キロを40分以内で走る「たぬき山の強化走」も「動物が出るから危ない」と廃止し、安全な場所で生徒を鍛えた。現代に見合った柔軟な指導で「強い国見を取り戻す」と、選手権に挑んだ。

結果は16強。完全復活ではないが、国見のサッカーは愛される。この日は同校OBで元日本代表FWの大久保嘉人氏(40)が3試合連続で応援に駆け付けていた。大型ビジョンに大久保が映し出される場面があり、等々力の観衆は「おぉー!」と感嘆の声を漏らした。OBからは東京に滞在する資金や、宿舎への差し入れも数多くもらった。

木藤監督は「本当に感謝です。いろんな方の支援に、生徒もびっくりしていました。こんなに国見はすごいのかって。『自分たちが新しい国見を作っていく』という気持ちでやってくれてました」とうなずいた。

戦後最多タイ、6度の選手権制覇を誇る。最後に優勝したのは、元日本代表FWの平山相太を擁した03年までさかのぼる。木藤監督は「宿題ができました。次は国見を国立に戻ってこさせたい」と誓った。来年こそ。【只松憲】