第101回大会は、岡山学芸館が東山(京都)を3-1で下し、初優勝を飾った。

前半25分に相手のオウンゴールで先制。同点に追いつかれたが、後半にMF木村匡吾(きょうご、3年)が勝ち越し弾を含む2得点の活躍で勝利に導いた。出場メンバーにJユース出身者がいない「町クラブ」の“雑草集団”が岡山県勢初Vに導き、高校サッカーに新たな歴史を作った。東山は京都府勢で55大会ぶりの頂点に立てなかった。

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午後3時59分。国立競技場に試合終了のホイッスルが鳴り響いた。岡山学芸館の選手は膝から崩れ落ちる。悔し涙ではない。うれし涙だった。青いダークホースが、ピッチ上で感極まった。主将のDF井上斗嵩(つかさ、3年)は「まだ実感ない。本当に優勝したのか? って」と夢心地。同校初の選手権制覇だ。金メダルが信じられなかった。

1-1の後半7分にMF木村匡が決勝弾。左サイドからのセンタリングを頭で押し込む。身長165センチと小柄だが「気持ちです。気持ちで押し込みました」と気合。約1メートル、真上に跳んだ。相手GKは飛びつくこともできなかった。衝撃的なヘディングシュートを左隅にたたきこんだ。木村匡は同40分にもダメ押し弾。2得点で勝利に貢献した。

同校にプロ内定者はいない。決勝戦出場メンバー13人に、Jリーグ下部組織の出身もいない。大半が「町クラブ」でプレーしてきた無名の高校生。井上主将は「注目選手を倒してやろう、小粒の集団ですけど、群がって群がって全員でいこうと」と言う。準決勝ではタレント集団の神村学園に粘り勝ち。この日はC大阪内定のMF阪田をはじめ、Jユース出身者が並ぶ東山に勝利。開幕前は優勝候補に挙がっていなかったダークホースが成り上がった。

モットーは「縦に速いポゼッションサッカー」だ。パススピードは練習からプロに匹敵する速さを徹底した。豊富な運動量は学校側が後押し。17年にグラウンド隣接の寮が完成した。栄養摂取で効果的な練習後30分以内に食事が取れるようになった。選手は「米、野菜、お肉がちゃんと出てきて。米は全てなくなるまで食べます。寮で苦労していることはないです」と話す。疲労回復、フィジカル強化の一石二鳥だった。

岡山県勢として初優勝。高原良明監督(43)は涙を流し「いろんなチームに優秀な選手がいる。うちは代表経験のある選手もいない。でも、サッカーは個人スポーツではなく、チームスポーツ。選手が証明してくれた」と胸を張った。選手権は2年連続5回目出場。過去最高だった16強を超えるベスト4入りが目標だったが、一気の飛躍だ。岡山学芸館が高校サッカー史に名を刻んだ。【只松憲】

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