ヴィッセル神戸が発足29年目、J参入27年目で初優勝を果たした。元日本代表FW武藤嘉紀(31)にとってはサッカー人生で初めての優勝となった。10得点10アシストで、エースFW大迫とともに貢献した31歳が、日刊スポーツに手記を寄せて、初優勝の喜びを語った。

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自力で獲得したタイトルがこんなにうれしいものだとは正直思っていなかった。11月に神戸の小学校を訪問した際に「今の夢ってなんですか?」と聞かれて、思い浮かんだのが、ヴィッセルで優勝したいということだった。それが実現できて本当にうれしい。みんな満身創痍(そうい)だったけど、優勝をつかんだ時はサッカー人生でも一番うれしいと思える瞬間だった。

試合が終わった瞬間はほっとしたが、直後に『夢なんじゃないか?』と思った。朝起きて、試合前だったらどうしようと(笑い)。(9月29日第29節)横浜戦の前にも、試合に負けて優勝できない、という夢を見たりした。もう悪夢。大一番の前に、結構そういう悪い夢を見るけど、現実で優勝できて、本当に良かった。

今季の勝因は、相手に合わせるのではなく、自分たちが何をしなきゃいけないか、にフォーカスできたこと。泥くさいサッカーをできる選手が試合に出て、できない選手は出られないというのが明確だった。最初の3連勝は大きかった。こうすれば僕らは勝てるんだ、ということがわかった。

経験ある選手たちが「自分たちがやることをやる」と言い続けたことも重要だった。他チームの結果うんぬんではなく、大事なのは自分たちだと。ライバルの試合が1時間早くやっていた時、移動中のバスで試合を見て一喜一憂している選手がいた。そして、その後の試合で負けたことがあった。その時に「お前ら集中できてなかったな。(他の試合は)関係ねえだろ」と伝えていたこともある。

体は本当にきつかった。夏場にぜんそくのような症状の時は、試合までに熱が出るし、せきも止まらなくなった。自分でもどうしていいかわからなかった。メンタル的なものなのか? と思ったり。とにかく気合だった。みんなも痛み止め、解熱剤などを飲んで戦った。サッカー選手は華やかな部分しか見られないけど、表には出ない苦労やきつい思いはいろいろあった。

やりきれたのは「やるならもう100パーセントやる」ということをモットーにしていたから。チームの足を引っ張るようであればすぐ退くけど、やっぱり自分が出て、何とかチームのプラスになりたい気持ちが強かった。

神戸の街を盛り上げることも、少しはできたんじゃないかな。野球の2チーム(阪神とオリックス)の優勝で盛り上がって、サッカーでも続きたい気持ちだった。29年間1度も優勝していないチーム。優勝すれば街が盛り上がるとわかっていたから、何が何でも成し遂げなくちゃいけなかった。

(優勝を決めた名古屋戦の)ゴールパフォーマンスに関しては、僕がパワーをもらったもの。(小学校訪問した時に)神戸の子が自分を知ってくれて、応援してくれて、喜んでくれたというのは、本当にうれしかった。それでゴールパフォーマンスをしてほしいと言ってくれて「見ててね」と言っていたので、やるしかなかった(笑い)。ちょっと恥ずかしさはあったけど、それ以上に、子供たちに夢を与えられたと思うので、やって良かったなと思う。

神戸に来て、僕はすごくいい人に恵まれている。今まではそんなに交友関係が広い方ではなかったけど、神戸では異業種の方々とも交流させてもらっている。何の見返りを求めず、与えてくれる「ギブの精神」を持っている人たち。そういう人に出会って、人を幸せにして、さらに自分も幸せになれる、と思うようになった。

夏の甲子園で優勝した母校慶応の野球部にも刺激をもらった。神戸で家族とランチしている時に甲子園出場が決まって、本当にうれしかった。マットレスを贈ることにしたのは、何かプラスになることができるかなと考えて。神戸ではサッカーの面ではもちろん、人間性の部分でも成長できたかなと思う。

家族、特に奥さんには感謝している。離れて暮らしていて、家族サービスや育児サポートはほとんどできなかった。僕はチームで戦わなくちゃいけなくて、バランスや体調を崩してしまったら、迷惑をかける。ここでベストなコンディションで臨む必要があった。その分、奥さんは本当に大変だったと思う。子供3人のうち1人でも風邪をひいていたら、僕は(関東の家に)帰ることやめていたし、僕は腰が強くないので子どもを抱っこすることもほとんどできなかった。これだけ良いシーズンを送れたのは、間違いなく奥さんのおかげだった。

小学生に誓った優勝という夢はかなったが、次の夢はまだこれから。次にACLをとりたいという目標はあるけど、夢とは違うかな。とにかく先に重きを置かず、目の前のことをコツコツとこなしていければ。みなさん、引き続き応援よろしくお願いします。(神戸FW)

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