今季の清水エスパルスは好不調の波が激しく、安定感を欠いた。大量得点での快勝もあれば、沈黙する試合もあった。勝負どころで本来の力を発揮できずに勝ち点を取りこぼした試合は少なくない。「勝負弱さ」。近年の清水を形容する言葉で片づけられれば簡単だ。しかし、勝ちきれないのには理由がある。

確固たるスタイルがなかったことがその1つだろう。ある選手は言う。「土台がないというか…。目指すスタイルがよく分からなかった」。その指針も示さずにチーム編成を主導してきた大熊清ゼネラルマネジャー(GM、59)の責任は言うまでもない。5季連続でシーズン途中に監督が代われば戦い方も変わる。「作っては壊れ、また作り直しては壊される」を繰り返せば、チームとしての上積みもあるはずがない。

特に今年は「スタイルなき清水」の色が濃かった。戦い方のベースはMF乾貴士(35)やFWチアゴ・サンタナ(30)ら個々の力に頼った。MFカルリーニョス・ジュニオ(29)を含めた3人で計37得点。チーム総得点(78得点)の約半数を3人で取った。だが、その得点源を封じられると八方ふさがりになる。人任せでは限界があった。

象徴的な試合はリーグ後半戦の藤枝戦と熊本戦の2試合。対峙(たいじ)した両チームは人とボールが連動し、相手が嫌がるポジショニングを取ることで優位性を作ることが得意だった。清水は圧倒的な「個」を前面に出した戦いで挑み、完敗。戦術完成度の違いは明らかだった。

東京Vとのプレーオフ決勝後に乾は言った。「1人1人のクオリティーはJ1でもおかしくないけれど、結局僕らはJ2で4位」。その言葉が今季のチームを物語っている。シーズン途中に就任した秋葉忠宏監督(48)は序盤の遅れを取り戻すべく、効果的に勝ち点を積める戦い方を優先した。連戦が続いた過密日程の中では戦術を落とし込む時間的余裕は少なく「難しかった」と振り返る。

来季はJ1昇格が至上命令だが、足元を見つめて土台を作るシーズンにしなければいけない。続投が決まった指揮官は「いろいろ変えなければいけない。それはピッチ外も含めて。時には痛みを伴うし、当然嫌なこともある。でも、そこから目を背けずにやっていく」。本気でチームを変えようとしている現場のトップを、フロントはしっかりと支えなければいけない。再起の1年。クラブ史上最低の結果という屈辱にまみれたシーズンを無駄にしてはいけない。【神谷亮磨】