<J1:清水3-0山形>◇第2節◇13日◇アウスタ

 「鉄人」の一発でホーム開幕勝利を締めくくった。J1清水が山形に快勝した。前半13分、FWフローデ・ヨンセン(35)のシュートがFW藤本淳吾の左ひざに当たり先制。後半43分にFW岡崎慎司(23)のゴールで2点目を奪うと、最後は途中出場のMF伊東輝悦(35)が「1099日ぶり弾」を放った。

 伊東が両手でガッツポーズをつくり、天に向かってほえた。「まあ、気持ちよかったよ。シュートはうまくいったって感じ。きれいに決まったね」。3年ぶりのゴールに自然と笑みがこぼれた。FW岡崎の負傷退場で途中投入されてから、わずか3分での“神業”に長谷川監督も「テルが3年ぶりに点をとってくれたし、結果的には最高の終わり方ができた」と、ベテランをたたえた。

 無欲のゴールだった。2点をリードした試合終了間際に投入され「このまま終わらせるのが一番」と、自らに課せられた役割を認識してピッチに入った。だが、96年のアトランタ五輪のブラジル戦のように再び「奇跡」が訪れた。後半ロスタイム、相手ゴール前でボールをキープし、MF山本真にパスを出したが、相手DFの足に当たり、ルーズボールが伊東のもとへ戻ってきた。今度はパスではなくシュートを選択。右足をシャープに振り抜くと、ボールはグラウンダーでゴールの中へと吸い込まれた。

 自身リーグ通算30得点目は「パパ1号」でもあった。この日、スタンドには恵理子夫人と、2歳の長男・昊輝(こうき)君の姿があった。「ちゃんとパパが決めたってわかるかな?

 まだ2歳半だからな。家に帰ったら自慢してやろっ」と、J最多の通算468試合に出場する「鉄人」が、何よりうれしそうに話した。

 開幕戦はMF小野の加入や、MF本田らの若手の台頭で出場機会がなかった。今後も厳しい立場に立たされることが予想されるが「普段の練習でやってきたことをやるだけ。時間が短い中でも自分がやれることを表現していくしかない」と自然体だ。今や試合に出るだけ前人未到の記録を塗り替え続けるが、節目のJ通算500試合までは、今季の残り試合数と同じ32試合。先行して鉄人が締めくくるパターンが続けば、清水も伊東もメモリアルイヤーになる。【為田聡史】