<高校サッカー:星稜3-0日大藤沢>◇準決勝◇10日◇埼玉

 星稜(石川)が日大藤沢(神奈川)を下し、2大会連続で決勝進出を決めた。悲願の初優勝を目指す星稜は、交通事故で負傷して入院中の河崎護監督(55)へ、準々決勝後にメッセージを集めた色紙を贈っていた。「決勝で一緒に戦いたい」という思いでさらに団結。前回大会のリベンジも果たすため、12日は前橋育英(群馬)との決勝に臨む。

 勝利の瞬間、星稜イレブンは抱き合い、両手を突き上げた。2大会連続で決勝に進んだのは、首都圏開催となった76年度以降、04、05年度の鹿児島実以来8校目の快挙だった。

 悪夢を振り払う1発だった。2点リードしていた前半ロスタイム。FW大田が中央で仕掛け、ペナルティーエリア内で相手のハンドを誘った。PKを獲得し、自らが落ち着いて決めた。「3点目が重要だった。2-0では危険という意識はみんなの中にあった」。前回大会、富山第一との決勝を2-0でリードしていながら、残り3分で同点にされ、延長で勝ち越しを許していた。

 大田にとっては今大会3点目で得点ランク首位に並ぶ1発。他の6選手は決勝に出られない。勝利のため、単独得点王のため、どうしても必要な1点だった。

 絶対に勝たなければいけなかった。16年連続で選手権に導いている河崎監督が交通事故で負傷し、入院中。そんな中、5日の履正社との準々決勝に勝利した後、監督代行を務める木原力斗コーチ(27)から提案があった。今大会1試合も指揮を執れていない監督へ、登録メンバー各30人が思いを色紙に記した。MF鈴木主将は「『決勝で監督と一緒のピッチで戦いたい』と書いた」。監督が復帰する場所を用意するために、さらに一丸となった。

 前回大会は同校初の決勝で、OBで日本代表FW本田の4強を超えた。当時2年生でピッチに立った鈴木は「でも優勝できなくて悔しかった」。再び「日本一」を目標に掲げスタートし、恒例の試合前日に行う3年生だけのミーティングでは勝利への執念を語り、涙を流す仲間もいた。「こいつらのためにも勝たないと」という思いだった。

 木原監督代行も「監督がいない中、選手は自分たちで解決しようと成長している。3年生は最後の試合だから、思い切ってやって欲しい」。河崎監督の復帰は未定だが、前回チームをも超える団結力がある。悲願の初優勝へ、再び王手をかけた。【小杉舞】