ロシア大会準優勝のクロアチアに勝つのは、簡単ではない。経験と技術力があり、フィジカル面でも強い選手がそろう。ただ、相当疲労を蓄積していると予測できる。初戦をモロッコと引き分けて、勝利が欲しかった2戦目のカナダ、前回ロシア大会3位でFIFAランキング2位のベルギーと戦った3戦目と、スタメンを変えずに戦ったダメージは想像以上に大きいはずだ。

10人の選手が同じ先発で3試合を戦った。おそらく日本戦も変えないだろう。中東の暑さに加え、中3日の4連戦は、体力的にはかなり厳しい。前回大会では延長戦を戦いながらも決勝に進んだタフさに驚いた経験があるだけに楽観視はできないが、エースMFモドリッチ(37)ら多くの主力は4年の年を重ねているなど、チーム全体の体力面に衰えは隠せない。

日本は1次リーグ3戦を通じて基本的な戦い方が確立され、共通認識も高まった。守備をベースにして三笘や堂安らの選手交代のタイミングでスイッチを入れて一気にギアを上げる。最初から真っ向勝負した方がいいとの考え方もあるが、ここまできたら、この流れを崩さない方がいい。選手たちも納得し、慣れた戦い方を最後まで貫いた方が、勝利への確率は高くなる。

ドイツ戦とコスタリカ戦は、4バックでスタートして途中から3バックに変更した。スペイン戦は相手の4-3-3に対応するため最初から3バックで入った。実質5バックで守りから入ったという表現が適しているかも。クロアチアもスペインと同じ4-3-3システム。おそらく日本は3バックで戦うはず。この大会で得点した4点はすべて3バックの時だったし、その方が結果も残している。

いい守備からいい攻撃へ-。このパターンに選手は慣れているし戦いやすい。ある程度、相手を自陣に引き込んでからカウンターを狙う。相手がバックパスしたらFWから全員が連動して追っていく。この日本の戦術はクロアチアも研究しているし、熟知しているだろう。それでも今の日本には、たとえ戦術が読まれたとしても勝ち切る勢いと、柔軟な対応力がある。堂安や三笘ら好調な選手もいる。

これまで主だった活躍がみられていない鎌田、南野、久保がそろそろ主役になることも期待したい。コスタリカ戦では、らしくないミスもあった鎌田だが、随所に技術力、判断力の高さを見せ攻守にわたりチームに貢献。久保はドイツ戦は守備の時間が長く、あまり活躍できなかったが、スペイン戦は調子が良かったと私は見ている。効果的なプレーが多かったし、尻上がりに調子を戻している。南野にも背番号10の意地がある。

まだ決勝まで突き進め、とは言わないが、好調な選手が調子を維持し、さらに活躍ができそうだし、まだ本来の力を出し切れていない選手が奮起して爆発してくれれば、もっと面白くなる。好調なチームは必ずラッキーボーイが出現する。田中がスペイン戦で決勝ゴールを挙げたように、今の日本代表にはそのムードが漂っている。ここから1試合でも多く戦ってほしいし、その可能性を十分感じている。(磐田スポーツダイレクター・元日本代表MF)