「90点ぐらいは与えてもいいんじゃないですかね。チャンピオンズリーグ(CL)も出られたし。個人として目標の数字まではいってないですけど、ある程度点も取れたし、アシストもできたし、すごくうれしいですね。今季はすごく充実しています」
日本代表MF久保建英(21)は、レアル・ソシエダードにとって10季ぶりとなるCL出場が決まったアトレチコ・マドリード戦直後、晴れやかな表情でこのように語った。
■目指した得点&アシストで20ゴール
今季もあとリーグ戦1試合を残すのみ。久保は開幕前、「得点とアシストで計20ゴール」という目標を掲げていた。ここまでの成績は、公式戦50試合中44試合(先発32試合、フル出場8試合)、2843分出場、9得点6アシスト(※2つのPK獲得含む)と目標達成は非常に難しい。
しかし過去3季の成績を振り返ってみると、スペイン初年度となったマジョルカ時代の19-20年シーズンは36試合出場、4得点4アシスト。ビリャレアルとヘタフェに所属した20-21年シーズンは37試合出場、2得点4アシスト。再びマジョルカに所属した昨季は31試合、2得点2アシストだったため、この1年間の成績は申し分ないものと言えるだろう。
スペインで4年目を迎えた久保は今季、レアル・マドリードを去り、昨季のリーグ戦を6位で終え、3季連続で欧州リーグ出場権を獲得していたレアル・ソシエダードに完全移籍するという大きな決断を下した。選手育成に特に定評があり、下部組織出身選手が多数所属するファミリー的な雰囲気のある、以前から興味を持たれていたクラブだった。
昨年7月に合流した久保は当初、エースのオヤルサバルが長期離脱していたものの、シルバやブライス・メンデス、スビメンディ、ミケル・メリーノなど、中盤にハイレベルな選手がそろっていたことから厳しいポジション争いが存在し、スタメン入りの難しさが懸念されていた。
しかし、久保はプレシーズン2試合目から参加すると、すぐさま攻撃のさまざまなポジションでプレーできるポリバレントな能力を発揮してアルグアシル監督の信頼を勝ち取っていった。
■右FWという予想外のポジション
そんな中、8月半ばにアウェーで迎えたカディスとのリーグ開幕戦でレギュラーとして抜てきされたが、そのポジションは中盤ダイヤモンド型の4-4-2の右FWという、久保が「練習で全く試していなかった」と明かした予想外のものであった。
それでも突然のFW起用にも全く戸惑うことなく即座に適応し、さらには決勝点を記録してチームを1-0の勝利に導いた。
外国人助っ人選手としての役割を見事に果たした久保は試合後、「初戦をスタメンで始められて、しかも点を取って、今までで最高の滑り出しだと思う」と感想を述べ、新天地で上々の滑り出しに安堵(あんど)した様子を見せた。
■乾に次ぐスペインリーグ100試合
以降、周知の通りに久保の躍進はとどまるところを知らなかった。シーズン途中のワールドカップ(W杯)開催の影響を大きく受けたタイトな日程により、チーム内で負傷者が続出する中、ほとんど休むことなく稼働し続けるタフさを見せ、戦いの場に立ち続けた。実際、ここまでにけがでベンチ入りできなかったのは、左肩脱臼による2試合のみである。
昨年9月の第6節エスパニョール戦で乾貴士(現清水エスパルス)に続き、日本人で2人目となるスペインリーグ100試合出場を達成すると、クラブ史上初となる公式戦9連勝に大きく貢献。その後にチームが公式戦10試合でわずか1勝というスランプに陥った時も、久保は右サイドを主戦場に3試合連続でマン・オブ・ザ・マッチに選ばれるなど、決して輝きを失うことはなかった。
決定力を高めてチーム2番目の9得点を挙げているが、その全てが勝利につながっており、シーズンの自己最多得点記録を更新し続けている。そしてマン・オブ・ザ・マッチ選出9回というのは、グリーズマン(アトレチコ・マドリード)やレバンドフスキ(バルセロナ)といったワールドクラスの選手たちを上回り、スペインリーグ最多である。
■最終節6・4は22歳の誕生日
バスクダービーなど重要な試合でゴールを決めてサポーターのハートをわしづかみにし、チームにとって欠かせない存在であることを証明し続けた結果、ほとんどの選手がけがから復帰した今もレギュラーの座を守り続けている。
さらなる飛躍を遂げた今季を締めくくる最終節は自身の誕生日となる6月4日にホームで開催され、欧州リーグをPK戦の末に制したセビリアと対戦する。22歳になるその日、スタジアムに集うサポーターと欧州CL出場権獲得の喜びを分かち合うこととなるだろう。
また、久保は先日、「来季、ラ・レアル(※Rソシエダードの愛称)の人たちが僕を必要としないことを恐れていましたが、彼らが来季も僕を必要としてくれているのでとてもうれしいですし、僕は来季も100%、チュリウルディン(※Rソシエダードの愛称)の選手です」と継続を宣言したため、スペイン5季目にして初挑戦となる欧州最高の舞台でその勇姿を見られることを心待ちにしたいと思う。
【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)