スペインリーグ今冬の移籍市場が2月1日に終了した。経済力は依然として他の主要リーグに遠く及ばないものの、スペインリーグが数カ月前に経済統制を緩和したおかげで、今冬は補強に動くクラブが多かった。

昨冬の補強総額は3768万ユーロ(58億4040万円)と落ち込んでいたが、今冬は3倍以上の1億2140万ユーロ(約188億1700万円/※出来高払い込み)に増加し、新型コロナウイルス感染拡大以前の19-20年シーズンの水準にまで戻っている。

昨冬大盛況だったプレミアリーグは派手な動きがなく、1年前よりも7億2200万ユーロ(約1119億1000万円)も少ない1億1982万ユーロ(約185億7210万円)。これにより、昨冬21倍もの大差をつけられていたスペインリーグが今回、プレミアリーグをやや上回る結果となった。

今回、一切の補強を行わなかったのはレアル・マドリード、ジローナ、ラス・パルマス、オサスナの4クラブのみ。この中でスペインリーグ首位のRマドリードは、けが人が続出しているセンターバックのポジションが懸念されるも、アンチェロッティ監督は「補強の必要なし」との判断を下し、昨季に続き全く動かなかった。

リーグ戦で旋風を巻き起こし、アトレチコ・マドリードやバルセロナを抑えて2位につけているジローナは、主力選手たちがビッグクラブに興味を持たれるも、戦力に関係ない2人を放出したのみで、ミチェル監督が信頼を置くメンバーを留めることに成功した。

一方で16クラブが昨冬の40人を上回る計44人を補強している。そのうち資金を投じて選手を獲得したのは、バルセロナ、Aマドリード、ベティス、セルタ、グラナダ、レアル・ソシエダード、ビルバオ、アラベスの8クラブと半分だった。

最も大きな動きを見せたのは19位と降格圏に沈んでいるグラナダ。後半戦で巻き返しを図るべく最多9人を獲得した一方、8人を放出し大幅にリニューアルしている。攻撃の中心であったブライアン・サラゴサをバイエルン・ミュンヘンに完全移籍(※今季後半は期限付き移籍)させたことで2150万ユーロ(約33億3250万円)を手にし、選手売却(※期限付き移籍の手数料含む)の収入が今冬最も多いクラブとなっている。

今季まだ1勝も挙げていない最下位のアルメリアは新たに5人と契約を結び、グラナダに次ぎ2番目に補強選手の多いクラブとなった。これに7位ベティスと14位ビリャレアルが4人獲得で続いている。

そして今冬、補強費が最も多かったのはバルセロナで6100万ユーロ(約94億5500万円)。けが人続出の影響を受けた昨季の王者は現在、首位Rマドリードに勝ち点10差の4位と落ち込み、シャビ監督がシーズン終了後の退任を発表するなど厳しい状況に陥っている。

今冬いくつかのポジションで補強が必要と言われながらも、依然として続く財政難がネックとなり、昨年7月に移籍金3000万ユーロ(約46億5000万円)+出来高3100万ユーロ(約48億500万円)でアトレチコ・パラナエンセ(ブラジル)から獲得した18歳のブラジル代表FWビトール・ロケを、予定よりも半年間前倒しで加入させるにとどまった。この金額は今冬のスペインリーグにおける移籍金の最高額である。

補強費が2番目に多かったのは3位Aマドリードで2780万ユーロ(約43億900万円)。今冬2番目に高い移籍金で18歳のベルギー代表MFフェルメーレンをロイヤル・アントワープから獲得。その金額は1800万ユーロ(約27億9000万円)+出来高900万ユーロ(約13億9500万円)。さらにルーマニア代表GKモルドバンをラピド・ブカレストから80万ユーロ(約1億2400万円)、ブラジル人DFガブリエウ・パウリスタをバレンシアからフリーでそれぞれ補強した。一方、一方、ハビ・ガラン、グルビッチ、ソユンクがチームを離れている。

久保建英が所属する6位のRソシエダードは、チョーをニースに1000万ユーロ(約15億5000万円)で売却した代わりに、スリナム代表FWベッカーを移籍金300万ユーロ(約4億6500万円)でウニオン・ベルリンから獲得した。さらにDFアイエン・ムニョスが今季絶望の大けがを負ったことを受け、スペイン人DFハビ・ガランをAマドリードから期限付き移籍で補強している。

昨冬同様、今冬の移籍市場でも上位陣にあまり動きがなかったが、一方で巻き返しを図る下位クラブに派手な動きが見られる結果となった。シーズン終了まで4カ月、16節を残すところだが、今回の補強がどのような影響を与えるのかに注目が集まる。【高橋智行通信員】(サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」/ニッカンスポーツコム)