世間を震撼させたドルトムントのチームバス爆破事件から11カ月が経過した。今年1月にはセルゲイ・W容疑者の初公判がドルトムント裁判所で行われ、さらに今月19日にも、現場に居合わせたトーマス・トゥヘル元監督、主将のマルセル・シュメルツァー、第2GKロマン・バイデンフェラー、今季からレーバークーゼンでプレーするスベン・ベンダーらが証言台に立った。

 大衆紙「ビルト」が報じた内容によると、その中で検察から「もしも爆弾による攻撃がなかったら、まだ夏以降もドルトムントで指揮を執っていたかと思うか?」と聞かれたトゥヘル元監督は「もちろんそう思っている。あの事件によって、ドルトムントのハンス・ヨアヒム・バツケCEOと私の間には大きな溝ができた。私がバスの中に座っていて、彼が座っていなかったから、溝は生まれてしまった」と陳述し、「あの攻撃の翌日に(欧州CLの)試合をするべきではなかったと、100%の確信を持って言える」と続けたという。

 続いて証言を求められたシュメルツァーは当時のことを改めてこう描写した。

 「ものすごい音がして、バスの中はパニックになった。選手たちは通路に横になり、私自身も爆発の衝撃を感じた。そのあとに我々は(爆発で腕を骨折した)マルク・バルトラの叫び声を聞き、彼が血を流しているのを見た」

 事件から約1年が経過しようとしているものの、悲劇の瞬間は今もシュメルツァーの心に大きな傷として残っており、同選手は「例えばお皿が床に落ち(て大きな音がし)たり、ゆっくりとしたスピードで乗り物が自分の横を通ろうとする時に、いまだに(トラウマで)ビクっとなる。あの晩、寝つけた選手は一人もいない。家族の顔を見ることができて、誰もがホっとしたんだ」とコメント。そしてバイデンフェラーも同様に「事件があってから心理セラピーを受けている。それはまだ続いている」と語っている。

 また「爆発の瞬間を見た」というベンダーは、今もなお事件の瞬間を鮮明に記憶している。「バスの真ん中に座っていた」という彼は「外を見たら鋭い光が目に入り、(爆弾が隠されていた)生垣が(爆発の衝撃で)飛んでいくのが見えた。何人かの選手は床に倒れ、私も(爆発と逆側の)左へ体をよけた。そしてすぐに『みんな!爆弾が爆発したぞ!』と叫んだんだ。あの晩は寝られず、何度も目が覚めた。あのようなことは誰も経験したことがない。我々は(モナコ戦で)プレーしないほうが良かったと思う」と結び、トゥヘル監督らと同じ見解であることを改めて強調した。

 なおビルト紙によると、4月18日には現在ボルシアMGでプレーするマティアス・ギンターが、そしてその1週間後には香川真司、ラファエル・ゲレイロ、クリスチャン・プリシッチ、ユリアン・バイグルらが、証人として出廷する予定だという。