W杯ブラジル大会1次リーグ初戦(6月14日=日本時間15日)で、日本はコートジボワールと対戦する。アフリカからW杯出場を決めた5カ国の中でも、トップクラスの実力を持つ強敵だ。その攻撃のキーマンで、ローマで活躍するFWジェルビーニョ(26)にインタビュー。W杯の目標やチームのこと、ザックジャパンをどう見ているかなど率直に語ってもらった。

 -今年のW杯はあなたにとって2度目になります

 「10年W杯はいい思い出として残っている。僕にとって初めてだっただけでなく、僕のアフリカで行われた初のW杯だった。マンデラが亡くなった時にあのW杯のことを思い出した。彼は南アフリカでW杯を開催させる決定的な力となったからね。マンデラは私たちの現実を、誇りを持って直視することを間接的に僕に教えてくれた。そういった意味で彼の存在は大きかった。世界にとって彼はひとつのシンボルだった。アフリカ、そして黒人のために戦い、国内をまとめた偉大な人だ」

 -あなたは「ブラジルでアフリカ人選手たちはいいものを見せなければならない」と言いましたが、W杯でアフリカのチームが成功したことがないのはなぜ

 「それはおそらく経験や自覚が足りないのだと思う。でも全てのアフリカのチームはここ何年かで大きく成長したので、さらに高いレベルでこの大会に臨めるはず。ビッグリーグでプレーしている選手も多い。今年はアフリカのチームがセミファイナルまで行ける可能性もあると思う」

 -目標は

 「まず1次リーグを突破することだ。4年前は3試合で4点取って敗退した(3失点)。でもあのときの組み合わせはとても厳しかった。事実ブラジルとポルトガルが突破したからね」

 -コロンビアを一番手ごわいと思いますか

 「正直、チームとしてはあまりよく知らないが、個々の選手は知っている。強い選手がいるし、グアリン、クアドラド、ザパタ、ズニガらはイタリアでプレーしている。彼らのことは毎週の試合を注意深く見守っている。でもコートジボワールもいいチームだ。皆が全力を出すことができればコロンビアを打ち破れる」

 -日本代表はあなたたちより強いと思いますか

 「どちらのほうが強いか弱いかは言いたくない。コロンビアについても同じだけど、日本の違うところは初戦で試合をすること。スタートはとても重要なので、ぜひとも勝つようにしたい。僕たちの組は力のバランスが取れているので、他のチームより1点でも多く得点することが決め手となるかも知れない」

 -10年W杯南アフリカ大会直前の親善試合で日本を負かしました。その価値観は変わりましたか

 「あれから長い時間がたっている。それにW杯は親善試合とはまったく別のものだ。あの試合はもう判断基準にはならない。あれから僕らも成長したし、12年のアフリカ杯で優勝近くまで行った(決勝PK負けで準優勝)。皆自分たちの力に自信を持つようになったんだ。日本も同じかどうかわからないが、去年のコンフェデ杯はとてもよかった。僕らのように多くの選手が欧州の重要なリーグでプレーしている。とにかくあの親善試合では唯一いやな思い出だけが残っている」

 -どんなことですか

 「ディディエ(ドログバ)が腕をけがしたことだ。W杯まであと数日というところだったのに、いつもと同じくプレーしてけがを負ったんだ。彼のコンディションが良くなかったためにチームは1次リーグを突破できなかったのかもしれない」

 -ピッチで見たドログバとヤヤ・トゥーレはどういう選手ですか

 「ディディエ、ヤヤとコロ・トゥーレ、ブバカル・バリー、ゾコラ。皆、代表の基盤となる選手たちだ。ディディエは性格が比較的おとなしく、ヤヤは外交的なほうだろう。彼らは異なる2人のリーダーだ」

 -ここ何年か、コートジボワールはアフリカのバロンドールを生み出してきて、再びヤヤ・トゥーレが受賞しました。チームとしても優勝を勝ち取るためには何が必要でしょうか

 「ヤヤは今季アフリカ最優秀選手賞に見合う活躍をした。他にもビッグクラブでプレーするに値する価値を持ついい選手がいる。いいチームだし監督も優秀だ。何が欠けているのかはわからない」

 -ラムシ監督(中田のパルマでのチームメート)は4-2-3-1システムで戦います。真のストライカーが4人いて、非常に攻撃的なメンタリティーを持つチームですね

 「そう、とても強い攻撃力を持つチームだし、そのために解決策は異なりながらもレベルの高いディディエを最大限に利用しようとする。その一方で守りも堅い。12年アフリカ杯では1失点もしなかった」

 -W杯で敵となるギリシャDFトロシディスはローマのチームメートですが、W杯について話しましたか

 「ギリシャより僕たちが先に進出を決めることを望んでいる。彼には、W杯の前に殴ってやるって冗談を言ったよ」

 -あなたはルマンで松井と、アーセナルで宮市と一緒にプレーしました。彼らをどう評価しますか

 「2人それぞれ違うタイプの選手だけど、2人とも高い技術を持っている。宮市は若いけれど質が高く、将来の日本にとって重要な選手になるだろう」

 -今年のW杯のシンボルは誰で、どのチームが優勝候補だと思いますか

 「僕が挙げる優勝候補は、コートジボワール!

 冗談は別にして、W杯に出場するようなチームはどんなチームでも勝つ可能性があると思う。選手も同じことだ。一番強いチームと言えば、頭に浮かぶのは、有名な選手たちだ。メッシ、ロナルド、ルーニー。それからジェルビーニョ!

 イタリアに(ローマの同僚)トッティがいればいいね」(取材=マルコ・アンサルド記者、翻訳=波平千種通信員)

 ◆ジェルビーニョ

 本名ジェルベ・ヤオ・クアッシ。1987年5月27日、コートジボワール・アニャマ生まれ。現在の名前は、少年時代に通ったサッカースクールのブラジル人コーチによって名付けられた。才能を見込まれ05年にベルギーのベベレンと契約。07年にフランスのルマン、09年にリール、11年から2年間、英プレミアのアーセナルでプレーし、13年からローマと契約。今季は8得点を挙げている(15日現在)。スピードに乗ったドリブルからチャンスメーク、得点力もある攻撃のキーマン。代表ではU-23で主将を務め、北京五輪出場。07年11月のアンゴラ戦でA代表デビュー。代表通算53試合、13得点。179センチ、68キロ。利き足は右。

 ◆ジェルビーニョはこんな選手

 スピードに乗ったドリブルが得意で、右サイドを主戦場に1人で状況を打開する力を持つサイドアタッカー。またDF裏へ抜けてスルーパスを受けるプレーも持ち味。ただドリブラーにありがちなボールを持ちすぎるタイプなのと、ラストパスを供給できる選手が少なかったチーム事情のため、アーセナルでは力を出し切れず、レギュラー定着まではいかなかった。一方、身体的特徴として目を引くのが、広いおでこ。アーセナル時代は縮れた長髪の下に、生え際はどこなのか分からないほど、おでこが広がっていた。ローマ移籍後は幅の広いヘアバンドでおでこをすっぽり覆っている。

 ◆ドログバの骨折VTR

 W杯直前の10年6月4日、スイス・シオンで行われた親善試合の日本戦で、前半15分に日本DF闘莉王と激突した。ルーズボールをめぐり、跳び上がった闘莉王の膝が右腕に入り、途中交代した後、救急車で病院に向かって検査した結果、骨折と診断された。一時はW杯出場が絶望視されたが、5日にスイスのベルンで手術を受けて成功すると、7日にチームに再合流。軽量の脱着式ギプスを着けて1次リーグ3試合に出場したが、本来の力を発揮できず、チームは決勝トーナメント進出を逃した。