日本代表(FIFAランキング18位)が、5月31日の国際親善試合でアイスランド代表(同75位)に1-0で辛勝した。6月11日開幕のW杯北中米大会前のラストゲームで、森保一監督(57)はテスト的な采配も見せつつ白星を収めた。日刊スポーツの担当記者がゲームの機微や舞台裏に迫る「Nikkan Eye」。今回は、W杯で採用される「ハイドレーションタイム」を検証。“本番仕様”で臨んだ試合での、新ルールへの適応度合いを探る。
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茶の間には新たな“トイレタイム”だったかもしれない。ただ、国立競技場では重要な3分間だった。0-0の後半24分。ベンチ前で円を作る日本代表をじっと凝視した。作戦ボードを手に熱く指示する名波、斉藤両コーチ。じっと聞き入る選手たち。静かに見守り、最後に声をかける森保監督。勝負のあやが訪れた気がした。約3分後、新たな3人がピッチに入った。フォーメーションも大胆に変更。1点を加え勝利した。
水分補給を意味する「ハイドレーション」。北中米大会限定で、前後半の途中で3分間の給水タイムが取られる。天候や気温などに関わらず全試合で実施。“CMタイム”との声もあるが、試合の流れを変える重要なピースになりうる。
森保監督が「クオーター制になるくらいの準備をする」と言っていたのは、大げさではなかった。前半は守備に修正を加える程度だったように見えたが、後半は大胆に動いた。後半28分に攻撃的布陣へ変更。3月スコットランド戦でも後半33分から試した3-1-4-2に変えた。11人に加え、交代して退いた選手までもが作戦会議に参加。チーム全員で意図を共有した。
移行はスムーズだった。布陣変更の効果もあり、後半42分に小川がゴール。右ウィングバック(WB)菅原がクロスを上げる際、左WB長友も含めた前線5人がペナルティーエリアに入った。2トップとシャドー(トップ下)の後藤はゴール前に密集し、相手DFの混乱を誘発。本大会でも有効なオプションを確立した。
それだけではない。得点後は5-4-1に守備陣形を修正。塩貝、後藤をサイドに配置した。残り約20分であれば「得点したら5-4-1」など仮定の指示も明確に出しやすかっただろう。この変更も円滑だった。
従来、大胆な采配は難易度が高かった。ハーフタイムではベンチから直接指示できても、試合途中は難しい。23年3月のコロンビア戦では“メモ作戦”を実行した。システム変更を記した1枚の紙を、交代で入るFW浅野を通してMF遠藤にピッチ上で渡した。プレーが途切れた時に周囲の選手にメモを見せ、作戦を共有。しかしメモを「見られなかった」と告白した選手もいた。今回は前後半に1度、明確に修正する機会を得た。
これまでのW杯は、試合途中に悪い流れを切れずに何度も敗れた。06年、ブラジル戦で同点で迎えた後半に3失点し1-4。14年は、コートジボワールにFWドログバ投入から一気に流れを奪われ1-2の逆転負け。18年はパス回しが得意なベルギーが一転仕掛けてきた高さ攻撃に対応できず。MFフェライニらに苦戦し「ロストフの14秒」で2-3で敗れた。あのとき、もし「ハイドレーションタイム」があったなら…。結果は変わったかもしれない。
前回大会は、ドイツ戦でハーフタイムに3バックへ変更し強敵を撃破。今大会は新規則を活用し、前後半の途中に大胆な采配が見られるかもしれない。森保ジャパンが、新たな武器を手にした。そしてこの3分間が「最高の景色」へと導いてくれると感じた。【飯岡大暉】


