[ 2014年2月9日9時25分

 紙面から ]聖火台(右後方)をバックに撮影する町田(撮影・益田一弘)

 フィギュアスケートの町田樹(23=関大)に、初メダルの舞台が整った。8日、練習リンクで練習。前夜の開会式では聖火点灯のフィナーレで、町田のフリー曲であるロシアの作曲家ストラビンスキーの「火の鳥」が使用された。06年トリノ五輪金メダルの荒川静香もフリー曲「トゥーランドット」が開会式で使われており「縁起がいい」と町田。壮大な開会式を刺激に「火の鳥町田」が飛翔(ひしょう)する。

 フィナーレは「火の鳥」だった。町田はこの日朝、テレビで開会式の映像を目に焼きつけた。聖火台を駆け上がる炎に、常々「宇宙まで飛翔したい」という自分の姿を重ね合わせた。

 「感動的でした。ロシア人にとってストラビンスキーは(米国に)亡命して、お国を捨てた作曲家というふうにとられている。ラフマニノフ(浅田のフリー曲などの作曲家)は英雄だけど、少し違う」。昨年11月に優勝したGPシリーズロシア杯で「火の鳥」を演じたが「反応がいまいち。調べたら、亡命した作曲家だった。そのストラビンスキーの精神が、五輪でロシアに帰ってきた」と喜んだ。

 最高のスタートだ。壮大な開会式は、現地時間7日午後7時14分にスタート。同10時55分に聖火リレーの最終章として「火の鳥」が使われた。町田の演技でいえば、両手を下から上にどんどん広げていく、飛翔をイメージしたパートだ。

 「火の鳥」は昨季から2年連続使用。開催国ロシアで生まれた曲を選び「バレエなど身体芸術が発達しているロシアは観衆の目も肥えている。その人たちに全身全霊で町田樹の火の鳥を届けたい」と誓っている。

 メダルに続く道だ。06年トリノ五輪で荒川はフリー曲「トゥーランドット」を使用。この曲も開会式でイタリアのテノール歌手、ルチアーノ・パバロッティ氏(享年71)が歌った。荒川は「運命を感じました」と話している。イナバウアーなどでイタリアの観衆を沸かせて金メダルを獲得。当時と同じ開会式=フリー曲というチャンスが町田にも巡ってきた。町田の「火の鳥」が、地元ファンに壮大な聖火点灯の感動を思い起こさせる流れになる。

 町田は、荒川の例を聞いて「本当ですか。縁起がいいですね」と大喜び。「あの聖火のような神聖な炎で、会場を満たしたい。火の鳥をここロシアに降臨させたい。僕の火の鳥も2年間で最終章です」。「火の鳥町田」が五輪会場を突き抜けて、宇宙の果てまで飛んでいく。【益田一弘】