[ 2014年2月23日9時51分

 紙面から ]エキシビションの練習で手をつなぐ浅田(左)と羽生(共同)

 ソチ五輪フィギュアスケート女子6位の浅田真央(23=中京大)は21日、今後について「じっくり考えたい」と話した。来月26日から日本で世界選手権(さいたまスーパーアリーナ)が控えており、25日の帰国後もすぐに始動する意向。ソチ五輪を集大成の舞台として臨み、その進退が注目されるが、発表は4月以降となりそうだ。

 勢いよく乗り込んだ選手村行きのバスステップで振り向くと、浅田は誠実に質問に答えていった。フリーの直後には「(4年後の平昌五輪の想像は)できないですね」と口にしていた。あれから2日間たち、何か心境の変化は…。去就への注目を察するように、正直だった。「全部が終わってから、じっくり考えたいです」。いつものように質問者の目を見ながら、柔らかくほほ笑んで言った。

 「やりきった」。その感覚に浸っていることは確かだろう。演じた側と見た側双方に、それほど印象に刻まれるフリーだった。トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)の成功に始まり、その姿から感情があふれるように踊った。喜怒哀楽、すべてを包括したような演技に国内だけでなく、海外からも称賛の声が届く。記録ではなく記憶に残る一世一代の滑りだった。

 本人にも歓喜の涙を流し、思うところはたくさんあるはず。だから全部が終わるまでは考えないように。そんな気持ちがうかがえる「じっくり」発言だった。

 昨年4月の国別対抗戦後に「(五輪で)集大成の演技ができるように」と初めて引退時期に言及した。その直後はイベントで「引退するのか?」と報道陣に聞かれ「はい」と返事したこともあったが、大会が始まった10月以降は「目の前の試合に集中する」という発言に徹した。17日の記者会見でもこう話していた。

 浅田

 まだ終わってみなければ分からないとは思うんですけども、本当に今までできることをすべてやってきた。あまり最後とは思わないように。でも悔いなく終わりたいと思うので、自分がやりきったと思えるような演技をしたい。

 確かにやりきった。そこでどんな心境の変化が起きたのか。本人もまだ結論が出ていないのかも知れない。

 だからこそ、いまは目の前の試合に集中する。来月26日からの世界選手権。23日の閉会式後に帰国するが、「1日くらい休むかも知れないですが、あまり時間はないので」。すぐに練習を再開するつもりだ。08、10年に続く3度目の世界女王へ向けて調整を積む。

 そこにも目標はある。フリーでは惜しくも2つのジャンプが回転不足、1つがエッジ間違いと判定された。3回転以上を8回跳ぶ「エイト・トリプル」。女子史上初の高難度プログラムを日本で完璧に滑り終えたとき、また違う景色が見えてくるだろう。

 その後も4月下旬までは、全国を回るアイスショーが続く。本年度は休学していた中京大に復学するかどうかも含めて、検討するという。落ち着いて自問自答できる時間ができるまで、いまは滑ることだけに心は向ける。【阿部健吾】

 ◆浅田の「集大成」発言

 13年4月13日の国別対抗戦(東京・代々木第1体育館)のフリー後に、13~14年シーズンにむけて「五輪という最高の大きな舞台なので、そこで自分の集大成の演技ができるように頑張りたいと思います」とコメント。その後「五輪シーズンが最後のつもりですか?」と聞かれ「今はそのつもりです」と答えた。自らの引退時期に言及するのは初めてだった。