男子やり投げ決勝で新井涼平(24=スズキ浜松AC)が83メートル07で9位に終わり、来年のリオデジャネイロ五輪出場は持ち越しとなった。「リオ切符」が内定する8位入賞まで6センチ及ばなかった。

 新井の2投目。スピードに乗った助走から勢いよく、やりが飛びだす。自然とガッツポーズが出る。80メートルラインを超え、地面に突き刺さった。記録は83メートル07で4位に浮上した。08年以降の世界大会(五輪、世界選手権)で8位入賞ラインは83メートルだ。リオ切符は手中に収めた、と誰もが思った。だが世界のレベルは、想像していた以上に高かった。

 3投目。優勝を射止めたイエゴ(ケニア)が、今季最高記録となる92メートル72の大アーチをかける。周囲もそれに触発されるように、ビッグスローを連発。負けじと新井も助走スピードが上げた分、ラインをオーバーし、痛恨のファウルとなった。直後、ベセリー(フィンランド)の一投は83メートル13。わずか6センチ差でかわされ、入賞圏内の8位から9位に転落。上位8選手で争う4投目以降には進めなかった。

 それでも悔しさはない。「手応えはあった。(3投目は)左足に体重の乗った分、(地面からの)反発が強かった。足が残っていれば。もったいないけどしょうかない。アジアのレベルが上がっている分、世界のレベルも上がっている」と笑みを浮かべながら話した。

 2つの目標を掲げて決勝に挑んだ。日本記録87メートル60(89年溝口和洋)更新と、09年ベルリン大会で銅メダルを獲得した村上幸史以来、3大会ぶりのメダル獲得。今季自己最高の84メートル66をマークし全体2位で予選を通過後に「まだまだ上げられる。反対側のスタンドまでやりを届ける」と宣言。8位入賞を超え、今大会のメダル第1号を目指した。

 「鳥の巣」には、父範夫さんと母悦子さんの姿もあった。家族の悲願でもある五輪切符は、来年6月の日本選手権まで持ち越しだ。ただ、初めての世界大会で「戦える」という手応えをつかんだのも確か。新井は「3投目に新しい感覚があった。次が見える試合になった」。大きな瞳を輝かせ、悔しさはぐっと胸にしまいこんだ。