今季世界最高は、ティモシー・チェルイヨット(21=ケニア)が3分30秒77で優勝した男子1500メートル1種目だけ。全体的に低調な大会だったが、男子100メートルではリオ五輪銅メダルのアンドレ・デグラッセ(22=カナダ)が追い風参考ながら9秒69の快記録をマーク。今季限りの引退を表明しているウサイン・ボルト(30=ジャマイカ)の後継者争いをリードしつつある。

 デグラッセは中盤まで隣のレーンのベン・ユーセフ・マイテ(30=コートジボワール)と並んでいたが、残り30メートル付近から一気に差を広げた。追い風4・8メートルのため参考記録ではあるが(追い風2・0メートル以内が公認条件)、9秒69は今季世界最高(9秒82)を大きく上回る。2位のマイテには2メートル近い大差をつけた。

「記録を見て驚いたよ。まだトップスピードを出せる状態には持ってきていないので、10秒を切れればいいと思っていた。私が経験した中で一番のスピードだった。公認でもこのくらいのタイムを出したいけどね」

 デグラッセの自己記録は9秒91で世界のファイナリストの中では遅い方だが、公認で9秒7台を出せば世界歴代7位以内に入ってくる。

 リオ五輪では金メダルのボルトに0・10秒差、銀メダルのジャスティン・ガトリン(35=米国)に0・02秒差だった。勝負強さが特長のデグラッセがシーズン前半で自己記録を縮めるようだと、大舞台で2強との争いが面白くなる。

 女子円盤投げではヤイミ・ペレス(26=キューバ)とサンドラ・ペルコビッチ(26=クロアチア)が激戦を展開した。

 1回目にペレスが67メートル92でリードしたが、ペルコビッチも67メートル61と僅差でスタート。しかしペルコビッチは力んだのかファウルを2~4回目まで続け、5回目に67メートル75と17センチ差まで迫ったものの、最後の6回目もファウルに終わりペレスの1回目の記録に届かなかった。

 15年9月から続いていたペルコビッチの連勝は「16」でストップ。

 ペレスは「ペルコビッチに勝ったのは2回目。8月の世界陸上に向けて大きな意味があった」と強調した。

 ◆今季の男子100メートル

 ボルトの出場が6月10日のキングストン(ジャマイカ)1レースだけで、10秒03と本来の走りができていない。ガトリンも10秒14がシーズンベストで、ダイヤモンドリーグでも2戦2敗と本調子でないのは明らかだ。

 ボルトは前回優勝者枠で世界陸上出場権を持っているため、前述のキングストンが最後。世界陸上前に出場するヨーロッパの試合でどこまで縮めてくるか。ガトリンは今月の全米選手権で優勝と記録の両方を狙ってくるはずだ。

 若手ではダイヤモンドリーグ2勝のデグラッセがリードしているが、クリスチャン・コールマン(21=米国)が9秒82の今季世界最高を全米学生の準決勝でマークした。リオ五輪はリレーだけの出場で個人種目の代表歴はないが、“ポスト・ボルト候補”の1人に数えられるようになった。