今季世界最高はゼロ、大会新もゼロ。肌寒さと風向きが一定しないコンディションのため記録的には低調に終わったが、男子棒高跳びのサム・ケンドリクス(24=米国)ら、跳躍3種目の優勝者が今季のダイヤモンドリーグで連勝を続けている。

 ケンドリクスは1週間前の全米選手権で6メートル00の今季世界最高をマークしたばかり。その勢いを今大会にも持ち込み5メートル77にただ1人成功。続く5メートル82もクリアし、世界記録(6メートル16)保持者であるルノー・ラビレニ(30=フランス)に20センチの大差をつけた。

 「ラビレニとの試合は本当に何が起こるかわからない。いつ6メートルを跳んでくるかわからないからね。今日は結果的に、5メートル72まですべて1回目で跳んだことが勝因になった。今年はすべての試合で5メートル80以上を跳ぶことが目標で、それを向かい風でも達成できて良かった」。

 棒高跳びの勝負ではパスを用いるケースがある。風向きが変わるのを待ったり、体力を温存したりするためだ。今大会では5メートル72をパスしたラビレニが5メートル77を3回とも失敗。「風が止んでくれることを期待したが、強くなってしまった」と悔しがった。

 陸上競技は競泳と異なり、記録は気象コンディションに大きく左右される。記録的に低調な大会では2位との差の大きさや、その選手が勝ち続けているかどうかが強さの尺度になる。

 パリ大会では男子の跳躍3選手が“連勝”で強さをアピールした。

 棒高跳びはパリ大会が今季のダイヤモンドリーグで3試合目の実施だったが、ケンドリクスが3戦全勝を達成した。今季は3~4月の室内も含めると、負けなしの9連勝中だ。

 同様に走り高跳びはパリ大会がダイヤモンドリーグ4試合目で、ムタス・エッサ・バルシム(26=カタール)が4戦全勝。今季全ての試合で負けなしの6連勝を継続している。

 3段跳びはクリスチャン・テイラー(27=米国)がパリ大会でダイヤモンドリーグ3戦全勝。先週の全米選手権に記録なしで敗れているが、前回優勝者枠で世界陸上出場権があるため無理をしなかった(1回目をファウルすると、残りの試技をパスした)。全米選手権をカウントしなければ、今季は負けなしの7連勝中である。

 日本の2選手は悪コンディションに記録を阻まれた。男子走り高跳びに出場した衛藤昂(26=AGF)は2メートル20で8位、戸邊直人(25=つくばTP)は最初の高さの2メートル20が跳べずに記録なしに終わった。

◆今季の男子棒高跳び

 リオ五輪銅メダルのケンドリクスの全米選手権が、今季唯一の6メートル台。銀メダルのラビレニのシーズンベストは5メートル83と、例年に比べエンジンのかかりが遅い。金メダルのティアゴ・ブラス・ダシルバ(23=ブラジル)は5メートル60がシーズンベストと苦しんでいる。

 5メートル80以上を8試合で跳んでいるケンドリクスがロンドン世界陸上の本命に挙げられるが、ここに来てすごい若手が台頭してきた。17歳のアルマンド・デュプランティス(スウェーデン)が5メートル90のU20世界最高、今季世界2位の記録を4月にマークしたのだ。

 まだ大試合での実績はないが、世界陸上前のダイヤモンドリーグに出場してきたら、身長170センチの小柄なボウルターに最大の注目が集まる。