■ダイヤモンドリーグ第9戦・ロンドン大会展望■

 陸上のダイヤモンドリーグ第9戦アニバーサリーゲームズが9日、ロンドン五輪会場だったロンドン・スタジアムで行われる。リオ五輪金メダリストは地元イギリスの英雄、モー・ファラー(34)ら9人が出場。また、男子110メートル障害のアリエス・メリット(31=米国)、女子100メートル障害のケンドラ・ハリソン(24=米国)もエントリー。ロンドンと関わりの深い2人のハードル世界記録保持者にも注目したい。

 ファラーが出場する種目は男子3000メートル。五輪&世界陸上4大会連続2冠を続けている5000メートル&1万メートルではないが、1500メートルでも3分28秒81(ヨーロッパ記録)のスピードを持ち、この種目でも優勝候補筆頭だ。

 ファラーはラスト勝負の強さが特徴だが、過去のダイヤモンドリーグでは中盤から独走することもあった。自身の現状を見て、課題となる走りを試しているのだ。今大会の走りに注目しておけば、来月のロンドン世界陸上のファラーのレースを見たとき、あのときの展開はこれをやりたかったからなのだと理解できるだろう。

 幼い頃にソマリアから戦火を逃れて移住してきたファラーは、イギリスへの思いが人一倍強い。またロンドンは、連続2冠をスタートさせた場所でもある。そしてロンドン世界陸上を最後に、ロード種目へ転向するプランも進めている。

 ファイナル2冠へのプレ大会として、ダイヤモンドリーグ・ロンドン大会のファラーは見逃せない。

 男子110メートル障害のメリットは、12年に急成長してロンドン五輪で金メダルを獲得。翌月のダイヤモンドリーグ・ブリュッセル大会で、12秒80の世界記録保持者へと駆け上がった。

 しかし翌13年以降は不調に陥り13秒を一度も切っていない。15年シーズン終了後には腎臓の移植手術も受け、昨年のリオ五輪は全米選手権4位で代表入りを逃している。

 今季は6月のローマ大会で4年ぶりのダイヤモンドリーグ優勝を果たし、全米選手権2位でロンドン世界陸上代表も決めた。思い出のロンドンで、完全復活といえるハードリングを見せたい。

 女子100メートル障害のハリソンは昨年、5月28日から6月16日のダイヤモンドリーグ3大会で3連勝し、12秒24の米国新記録も樹立していた。ところが7月8日の全米選手権は6位と敗れ、リオ五輪代表入りを逃してしまった。

 そこからわずか2週間で立ち直り、ダイヤモンドリーグ・ロンドン大会で12秒20の世界記録をマークした。翌月のリオ五輪で米国勢が1~3位独占を達成したことは、ハリソンにとっては複雑な心境だったに違いない。

 今年は全米選手権も1位で通過。思い出の地ロンドンを、来月のロンドン世界陸上へのステップとする。

 記録的に期待できるのは女子100メートルのエレイン・トンプソン(25=ジャマイカ)と、女子走り高跳びのマリヤ・ラシツケネ(24=ロシア。大会には個人資格で出場)だ。

 トンプソンはリオ五輪女子短距離2冠の選手で、昨年4月から100メートルでは12連勝中。昨年マークした10秒70は世界歴代4位で、歴代2位の10秒64までは射程圏内だろう。

 ラシツケネはダイヤモンドリーグ前戦のローザンヌ大会(6日)で、2メートル06の世界歴代5位をクリアした。自己記録を1センチ伸ばせば歴代3位、2センチ伸ばせば歴代2位となり、3センチなら世界記録である。

 ◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、昨年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していたが、今年はファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会が実施され、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ・チャンピオンとなる。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4または6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計上位8人(種目によっては12人)がファイナル大会に進出。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルのほかダイヤモンド入りトロフィーが贈呈される。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国毎の出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。