ヨーロッパに舞台を移して最初のダイヤモンドリーグ。男子400メートル障害でアブデルラーマン・サンバ(22=カタール)が47秒48のアジア新、ダイヤモンドリーグ歴代最高というハイレベルの記録で優勝した。他にも男子100メートルの9秒93、女子走り高跳びの2メートル02など、7種目で今季世界最高が誕生する盛況だった。

 男子400メートル障害は昨年のロンドン世界陸上と同様に、カルステン・ワルホルム(22=ノルウェー)が前半からリードを奪ったが、3つ内側のレーンのサンバも1メートル程度の差で追走していた。ホームストレートでサンバが追い上げ最終10台目は同じくらいに越えたが、着地後にワルホルムがバランスを崩してサンバがリードを奪った。

 記録を見たサンバは両手を広げて雄叫びを上げた後、ひざまずいてトラックにキスをした。

 「ダイヤモンドリーグ記録やアジア記録まで破ることができ、すごくうれしい。背中を押してくれたライバルたち、とりわけカルステンには感謝したい」

 従来のアジア記録はハディ・アルソマイリー(サウジアラビア)が2000年シドニー五輪でマークした47秒53。その後アジアでは00年代に為末大と成迫健児が47秒台を出したが届かなかった(昨年までアジア人の47秒台は3人だけ)。

 サンバは昨年48秒31と初めて48秒台前半を出した選手だが、今季は4月に47秒90、5月のダイヤモンドリーグ・ドーハ大会で47秒57とタイムを縮めていた。47秒48は世界歴代ではまだ14位だが、今季の伸び方を見ると世界で2人目の46秒台も目標にできる選手だろう。

 女子走り高跳びはマリア・ラシツケネ(25=ロシア/個人参加)が2メートル02の今季世界最高で優勝。この種目で2位を8センチ引き離したのは圧勝と言っていい。2メートル09の世界記録への挑戦を今後も期待できる。

 男子100メートルは第3戦のユージーン大会に続きルーニー・ベーカー(24=米国)が優勝。中盤から一気に抜け出し2位に0・09秒差をつけた。

 ユージーンでは追い風2・4メートルで参考記録となったが9秒78の快記録で走り、ローマでは向かい風0・4メートルのなかで9秒93の今季世界最高記録。公認で9秒7台を出せば“ポスト・ボルト”候補に躍り出る。

◆今季の男子400メートル障害

 サンバがダイヤモンドリーグ・ドーハ大会、ローマ大会と2連勝。記録的にも47秒48の今季世界最高を筆頭に47秒台を3回マークし、現時点では第一人者といえる。ローマ大会2位のワルホルムも47秒82と自身初の47秒台を出し、昨年の世界陸上金メダルがフロックでなかったことを証明した。

 今季3人目の47秒台はレイ・ベンジャミン(20=アンティグア・バーブーダ)で、5月後半に米国内で47秒98を出した。米国の大学に留学している選手で昨年の全米学生2位。そのときの48秒33が自己記録でそれなりの実績はあるのだが、国際大会の出場歴はほとんどないだけに驚かされた。

 安部孝駿(26=デサントTC)が48秒68でアジアリスト2位につけている。アジア大会までにサンバとの差をどれだけ縮められるか。