まさかのアクシデントに沈んだ。16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)以来のマラソンとなった福士加代子(36=ワコール)は12・6キロ付近で転倒した。両膝、右前頭部から流血しながら走り続けるも、25キロすぎに失速。35キロで無念の途中棄権となった。残された時間は限られているが、今後は20年東京五輪の代表選考会「マラソン・グランドチャンピオンシップ」(9月15日)の出場を諦めず、調整を進めていく。

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福士が予想外の悲劇に見舞われた。先頭集団を走っていた12・6キロ。前に出した足がケニア人選手の足と接触し、バランスを崩した。足をかばい、柔道の受け身のように右腕から地面に落ち、頭と両膝を強打。すぐ立ち上がり、約250メートルで先頭集団に追いついた。だが代償は大きかった。

サングラス右奥、両膝から流血が続いていた。その影響もあってか、25キロ手前で「意識がモアーッ」と薄くなった。足も重くなり、先頭集団の背中は遠のいた。この時からチームスタッフから棄権を促された。何度も止まりながら、「流れが変わらないか」と屈伸を繰り返し、前へ進む。35キロの給水地点で2時間7分24秒。30~35キロの通過タイムは24分2秒で、もうMGC出場権獲得は絶望的だった。永山監督から「無理をしないで、次に向けて状態を確認しよう」と告げられた。福士は「ごめんなさい」と言い、10度目のマラソンにして初の途中棄権を選択。医務室へ直行した。

5大会連続出場が懸かる東京五輪は最後まで諦めない。今後、MGC出場権を得るには、3月の名古屋ウィメンズで基準を満たすか、4月30日までに記録が公認されるレースで2時間24分00秒以内を残さなければならない。福士は今日28日に京都府内でエックス線など精密検査を受ける予定。その診察結果や練習経過を考慮し、次のマラソンを決める。永山監督は名古屋に出場する可能性を問われ「まだ40日ある」と言い「一番得意なパターンに持っていける。今日を練習だと思えば、考え方も変えられる」。短期間で強い負荷を積めば調子が上がる福士だけに前を向いた。悲運を乗り越え、ラストチャンスに懸ける。【上田悠太】