男子マラソン日本記録保持者の大迫傑(27=ナイキ)が日本陸連へ痛烈に苦言を呈した。23日、自身のツイッターを更新。まだ出場資格のない1万メートルの日本選手権(来月19日、ヤンマースタジアム長居)の要項に記される強化委員会の推薦での出場を申請したが、断られたと明かした。その後「私物化するのはやめた方がいい」などと批判した。推薦枠は04年アテネオリンピック(五輪)男子ハンマー投げ金メダリストの室伏広治が、リオデジャネイロ五輪出場を懸けて臨んだ16年日本選手権出場の際に使われた例がある。

大迫が日本陸連を批判した。日本選手権1万メートルに推薦枠での出場を打診するも却下された。そしてツイッターに「陸連強化委員から[大迫くんが日本選手権でいい走りをするとそれに負けた選手のランキングが下がり、不平不満が出るから]という理由でした。すごい理由だな。笑笑」(原文まま)とつづった。

同選手権に出場するには、一般的に昨年1月1日から今年5月6日の期間に参加標準記録Aの28分20秒0を破らなければならない。大迫の期間内の持ちタイムは28分26秒41。参加標準記録Bの28分45秒0は切っているが、その場合は地域選手権を突破する必要がある。大迫は現状、要項にある「強化委員会が特に推薦する本連盟登録競技者」でしか出場する資格はない。

大迫は「なぜこの様な項目を入れたのか」と記し、理由を推察。強化委員会が所属するチームの「お気に入りの選手を出場させたいから」などと公平性への疑問を呈した。「どういう選手が推薦出場に値するのかちゃんと明記して欲しい」と求めた。また強化委員の所属先の選手は合宿や遠征に優先的に参加できると指摘し「そろそろ陸連を私物化するのはやめた方がいいと思う」と批判した。

20年東京五輪のマラソン代表を目指し、9月15日の代表選考会「マラソン・グランドチャンピオンシップ」の2週間後に開幕する世界選手権は1万メートルも含め目標とはしていない。今後はスピードを鍛えるトラックの練習にも重点を置くが、短期間で2レースを走るのは肉体的負担が大きいと判断し、「推薦枠」での日本選手権1万メートルの出場を試みた。マラソンだけでなく5000メートル日本記録を持つ。重みある発言は反動も伴う。「こういうツイートをする事は、僕自身にも余計なプレッシャーをかけるし、リスクがある事を理解してほしい。だけど声を上げていかないと、ずっと変わらない」とも投稿した。その上で「誤解が無いように言うと、今の僕が上位に絡めるほど、日本選手権に出る選手は弱くない。むしろ挑戦させてほしいと言う気持ちから出場をお願いした次第でした」と付け加えた。

<世界選手権男子1万メートルの代表選考>

日本陸連が発表したトラック、フィールド種目の世界選手権(ドーハ)の代表選考要項では、昨年3月7日~今年9月16日までの期間に参加標準記録(27分40秒0)を突破し、日本選手権を制した選手がまず内定。以降は参加標準記録を満たした上で、9月16日時点の記録と順位を得点化した世界ランキング上位順となる。20年東京五輪の出場資格は27分28秒0の参加標準記録に加え、世界ランキング制度も適応される。

◆大迫傑(おおさこ・すぐる)1991年(平3)5月23日、東京都町田市生まれ。東京・金井中-長野・佐久長聖高-早大-日清食品グループを経て、ナイキ・オレゴンプロジェクトへ。18年10月シカゴ・マラソンで2時間5分50秒の日本記録。3000メートルと5000メートル日本記録も持つ。170センチ、52キロ。