「のぞみ」のようにかっ飛ばした。陸上男子1部100メートル決勝で、宮本大輔(20=東洋大)が10秒02で2連覇を飾った。参考記録となる追い風4・3メートルの条件に助けられたとはいえ、衝撃的なタイムを刻んだ。

公認記録の自己ベストは10秒23の2年生は「追い風参考ですが、10秒02を出すことができた。この記録を素直に喜びたい」と笑った。

まだまだ体の線は細いが、洛南高(京都)、東洋大の先輩である9秒98の日本記録保持者・桐生祥秀(23=日本生命)とオフに04年アテネ五輪(オリンピック)男子ハンマー投げ金メダリストの室伏広治氏の元でトレーニングを積むなど、フィジカルも少しずつ強くなってきた。後半にバランスを崩したことは反省材料だが、「エンジンが大きくなった。次は公認記録で10秒0台を」と成長をかみしめた。

大の電車好きだ。撮影はあまりしないが「見るので十分楽しい」。ともに練習する桐生も、あまりの快足ぶりに「ジェット桐生」とのあだ名で呼ばれることもあるが、自身も乗り物にまつわる話がある。知人から「新幹線みたいに走れ」と言われることもあると笑う。

もっとも自身も「のぞみ」で運用される「N700系」、東北新幹線「はやぶさ」で使用される最高速度320キロの「E5系」を思い浮かべながら、走ることもあるそう。下り新幹線「のぞみ」が名古屋駅に到着前に流れる車内アナウンス「この電車はただいま、三河安城の駅を定刻で通過いたしました。次の名古屋駅までは10分ほどで到着いたします」を新横浜版も含め、マネすることもあったという。もちろん鉄道模型Nゲージは実家にあるそうだ。

予選、準決勝は“安全運転”に徹していた。世界リレー大会後、筋肉が炎症を起こし、左膝にはテーピングを巻いていた。連覇へ“黄色信号”が点灯するも「走るのを辞めるほどではない」と出場を決意。予選は10秒29(追い風1・6メートル)、準決勝は10秒45(向かい風0・8メートル)。とも“終点”には、どの選手よりも先に到着するも、最後は体に負担をかけないよう“徐行”しながらの走りだった。しかし、決勝前に患部は「気にならなくなった」と“安全確認”が完了すると、テーピングを外した。ギアを適切に動かし、“最高速度”で駆け抜けた。

常に世代の最速の称号を得てきた。山口・周南中では10秒56の中学新記録を樹立。京都・洛南高では高校総体を2連覇し、10秒23の高校歴代3位のタイムを出した。東洋大入学後も1年で関東学生対校選手権男子100メートルを制した。早い段階で結果を残した天才は、早熟のまま姿を消すこともあるが、そんな気配はない。

今秋の世界選手権(ドーハ)、20年東京五輪の参加標準記録である、それぞれ10秒10、10秒05を視野に捉えた。「それがはっきりとした目標になる。10秒05も超えられるように頑張りたい」。まだまだ成長を続けていく。