全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)は来月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。厚い選手層の旭化成が令和初のニューイヤー駅伝で4連覇を目指す。

平成最後の大会を3連覇で締めた旭化成の西政幸監督(55)は「令和最初の大会でも優勝に“挑戦”する」と意気込む。旭化成の伝統に双子兄弟の活躍と、高卒選手の育成が挙げられる。それらの結果として選手層が厚いチームができる。スピード区間の1~3区、エース区間の4区、向かい風も予想されるスタミナ区間の5~7区のどこでトップに立っても不思議ではない。

7区間中最長距離(22.4キロ)の4区には各チームのエースが集う。旭化成の4区候補は9月の全日本実業団陸上1万メートルで日本人トップだった市田孝(27)と、昨年の日本選手権1万メートル優勝の大六野秀畝(27)だ。市田孝は17年大会では4区で、翌18年は3区で区間賞を獲得。市田孝がチームのエースに成長したことで99年を最後に優勝がなかった名門が復活した。

3連覇の屋台骨となってきたのが市田孝と宏(ともに27)、村山謙太と紘太(ともに26)の2組の双子兄弟である。旭化成といえば1980年代に2度、兄弟そろって五輪代表となった宗茂・猛双子兄弟が有名だがそれ以降、同チームでは双子兄弟が活躍してきた伝統がある。

市田兄弟の弟の宏は前回まで3大会連続6区で区間賞を獲得。3回ともトップで最終7区の選手へタスキを中継した。今月1日の甲佐10マイル(約16キロ)では、昨年のアジア大会マラソン金メダルの井上大仁(26=MHPS)らを抑えて優勝。現在絶好調だ。兄の孝は同日の福岡国際マラソンで五輪代表切符を目標に積極的な走りを見せたが、後半で失速して無念の29位。だが翌朝には、「ニューイヤー駅伝は4区を」とエース区間への意欲を見せていた。

村山兄弟は弟で1万メートル日本記録保持者の紘太が、夏の故障の影響でエントリーメンバーから外れたが、兄の謙太は9月のベルリン・マラソンで2時間8分56秒の自己ベストを記録。来年3月の東京マラソンで2時間5分49秒のMGCファイナルチャレンジ設定記録に挑戦意欲を見せるなど好調を維持している。ニューイヤー駅伝では5区を3年連続で走り、区間1位、1位、2位と3連覇に大きく貢献してきた。前回大会は市田孝が4区で区間16位のブレーキを起こしてチームは3位に後退したが、5区の村山謙太が先頭のMHPSを追い上げて34秒差で6区の市田宏にタスキを渡しチームの逆転劇に貢献した。

双子兄弟はそろって活躍することも多いが、片方のミスをもう1人がカバーするケースも多々見られる。今回も村山謙太は、弟の紘太の分まで快走して自身のマラソンに弾みをつけるだろう。

兄弟選手がそろって強くなれば、チームの成長も大きい。それに加えて高卒選手をしっかりと育成することで、旭化成は分厚い選手層を誇るチームを築き上げてきた。現チームの高卒選手で一番強いのは茂木圭次郎(24=東京・拓大一出)で、市田孝、大六野に続く4区候補だ。さらに入社3年目の斎藤椋(21=秋田工出)と2年目の小野知大(20=大分・鶴崎工出)が成長。甲佐10マイルでは井上や神野大地(セルソース)といったビッグネームと競り合い、斎藤が5位に、小野が6位に入賞した。2人はニューイヤー駅伝のエントリーメンバーにも名を連ねた。西監督も「今、強くなっている最中の2人です。初めてのメンバー入りをしっかりアピールしてきた」と期待をかける。

市田兄弟、大六野、村山謙太、茂木に加え、前半区間の候補として1万メートル日本歴代2位の鎧坂哲哉(29)、後半区間にはリオ五輪マラソン代表の佐々木悟(34)、東洋大で1年前の箱根駅伝2区を走った山本修二(23)らもいる。

斎藤、小野の2人が出走メンバー入りするようなら、旭化成の戦力はワンランクアップする。平成の最初のニューイヤー駅伝(1990年大会)は旭化成優勝だった(その後6連覇)。果たして令和最初もその歴史を繰り返すのだろうか。