明大が5年ぶりのシード権を獲得した。エース阿部弘輝（4年）が7区で記録を36秒更新する1時間1分40秒の区間新をマークするなど活躍し、予選会から6位へと躍進した。

阿部は冷静だった。「順位を上げることだけを考えていた」。タイムのことは細かく気にせず、ひたすら「前へ」走りを進めた。「あまり欲を出さずに走った。区間新ペースだと知ったのは18キロ。気付いたら記録が出たという状態だった」。

小田原中継所。前日2区で脅威の区間新をマークした地元福島の幼なじみ、相沢晃（東洋大）がチーム応援に来ていた。「頑張れよ」と一言、エールを受け阿部は「頑張るしかない」と、気合が入った。

相沢は同学年で同県須賀川市出身、円谷ランナーズスポーツ少年団、学法石川高と同じルートをたどってきた友人でありライバル。しかし、今回の箱根は「今の自分では勝てない」と2区の直接対決から身を引いた。

それでも相沢の快走に「刺激を受けないわけがない」と奮起し、自らも7区で区間新を記録して見せた。

同市は1964年（昭39）東京五輪のマラソンで銅メダルを獲得した故円谷幸吉さんの出身地。阿部は円谷幸吉メモリアルホールを訪れ、墓前に手を合わせたこともある。

「須賀川の偉大な陸上選手。円谷さんと同じように、東京五輪に出たい」と、1万メートルでの出場を狙うと宣言した。相沢も同種目での東京五輪出場を目指している。

将来的には円谷さんのようにマラソン選手になるつもりだ。「1万メートルでスピードをつけて、パリ五輪ではマラソンに出場できるように頑張りたい」と堂々と言った。