初優勝した昨年を3分44秒も上回る10人の力走だった。大きなミスもなく、復路では区間賞を2人も輩出した。ただ、強くなった東海大のさらに上に青学大がいた。両角速監督(54)は「お手上げです。10時間50分を切って負けたチームは初めてではないか」。想像を超える敗北は、高速化の印象をより濃くした。

滑り出しは歓迎する想定外だった。6区の館沢が、新スタイルを披露した。芦ノ湖から約4キロまでの登りで攻め、下りは並み、終わった平地で力走。日本選手権1500メートル2連覇の主将は「自分でも驚いた」という57分17秒の区間新で青学との差を1分縮め、7区でも松崎が区間3位で、2分1秒差まで詰めた。

誤算は期待が高まった8区。昨年は区間新、MVPの小松に最後の伸びがない。区間賞にも「1秒しかつめられず申し訳ない」と涙声。9区で引き離されると勝負あり。両角監督は「爆発感に欠いた。普通の駅伝をしていては勝てない」と新時代を痛感した。

黄金世代が4年になり、チーム作りに腐心した。4月に就任した栗原コーチからの「これが優勝したチームなのか。4年生が抜けたら、東海大の強みは何もない」との鋭い指摘で目が覚めた。個の実力だけで、強豪の文化がない。選手で考え、導入したのは朝練習前の声出し。例えば「寒くなるから体調不良にならないようにしよう」など。自主的に自分の意見を発信し、責任感を養った。

館沢は「卒業しても心配していない。3年中心に、頑張れば歴代最強のチームになる」と予見する。今季掲げた「令和の常勝軍団へ」に向けた歩みは、無駄にはならない。【阿部健吾】