昨年の日本選手権男子800メートル覇者で、9月から米国の強豪テキサス農工大に進学するクレイ・アーロン竜波(18=相洋AC)が1分50秒54で優勝した。

最初のコーナーを曲がり終えた時点で先頭に立つと、集団を引っ張り続けた。もう、この中では力が違う。後続の勢いは感じたが、逃げの展開の中、最後の直線で再加速する余力があった。ゼッケン「334」はギアを入れ替え、相手を振り切った。タイム以上に、ずっと先頭を走り続けての勝利は大器を物語っていた。

昨年の日本選手権では1分46秒59の高校新記録を樹立しているクレイは「タイムより順位を狙って走った。そこは満足いくレース」と振り返った。

これが大学進学前、最後の国内レースとなる見込みという。より高いレベルの選手と切磋琢磨(せっさたくま)するために、昨秋の世界選手権金メダリストも輩出したテキサス農工大への進学を選んだ。世界レベルの選手になるには、まず前半で力を使わず、スピードを出せる地力を高める必要があると分析している。「余裕を持ってラストスパートにつなげられる走りが理想」と言う。

日本から米国の大学へ進み、飛躍を遂げた選手と言えば、男子短距離のサニブラウン・ハキーム(21=フロリダ大)が浮かぶ。その“先輩”には大学選びの相談もしていた。米国人の父を持つクレイは「種目は違いますけど、日本からアメリカで活躍している1人。尊敬している。自分もサニブラウン選手のように頑張っていけたら。見本のような存在です」と話す。男子800メートルは日本が世界と戦えずにいる種目の1つ。そこに風穴をあける可能性を、この18歳は秘めている。【上田悠太】