23日に国立競技場で行われる陸上のセイコー・ゴールデングランプリ(日刊スポーツ新聞社共催)に女子100メートル障害の寺田明日香(30=パソナグループ)が出場する。昨年9月には12秒97の日本新記録を樹立し、6歳の長女果緒ちゃんを育てる母でもある。さらに記録を縮めるべく、昨秋の世界選手権(ドーハ)で感じた世界との差を胸に、ハードリングを見直した。

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寺田は今、ハードルを「跳ぶ」でなく「走る」と表現する。

「今まで見ていなかった細かい部分まで見直して、ハードリングの形、効率を求めてきた。跳ぶ動作、そのものも含めていじってます。パーンと跳ぶというより、ポンと弾む。走っている延長で、ハードルに達する。本当に84センチを跳んでいるの? というような感じになってきたと思う」。

具体的には10センチほど踏み切り位置を遠くすることで、ジャンプの放物線を低くする。「跳ぶ」という動作から、少しでも「走り」抜ける形に近づけ、減速を抑える。また従来はジャンプの頂点が、ハードルの真上をイメージしていたが、それを前とした。下降しながら、ハードルを超えれば、早く左足を地面に着けることができる。そうすれば、すぐ次の台へ向かう形に入ることができて、タイムを縮められる可能性を秘めるという。今までとは感覚も目線も大きく違い、ハードルと衝突する恐怖心も出るが、克服に励む。

引退、結婚、出産、7人制ラグビー転向も経て、復帰して10年ぶりに出場した昨秋の世界選手権。格上ばかりの環境は、成長のヒントに満ちていた。先の改善点はトップ選手の練習を間近で見て、そして撮影した動画のスローモーション再生を繰り返して気が付いた。「今まではハードリング1区間を分解することはなかった。そういう発想がなかった」と振り返る。久々の世界の舞台で、国内では気が付けなかった、隠された進化の余地を発見した。

東京オリンピック(五輪)の参加標準記録は、自身が持つ日本記録を0秒13上回る12秒84。はたから見れば、簡単に手が届く数字ではない。ただ、寺田は挑戦する過程を楽しむように言う。

「今はおもしろい。少しずつ体に染み付いてきて、新しい技術も考えなくてもできることが増えてきた。それをレースで出せれば、参加標準記録もそんなに高くはないんじゃないかと思っている」。

最初に生まれ変わった姿を披露する場がセイコー・ゴールデングランプリになる。舞台の国立は、東京五輪のメインスタジアムでもある。「寺田明日香じゃないとあの走りはできないかもしれないと思ってもらえたらうれしい。風の影響もありますが、12秒97以上では走りたいなと思っています」。30歳の母は、まだまだ伸びしろを感じている。【上田悠太】

◆寺田明日香(てらだ・あすか)1990年(平2)1月14日、札幌市生まれ。北海道・恵庭北高では高校総体を3連覇。09年と19年に世界選手権出場。13年に1度現役を引退し、16年12月の日本ラグビー協会のトライアウトに合格し17年1月から日本代表練習生として活動した。18年12月に陸上界に復帰。168センチ。

【とき】8月23日(日)午前11時35分競技開始

【ところ】国立競技場

【種目】▽男子=100メートル、200メートル、400メートル、800メートル、1500メートル、110メートル障害、400メートル障害、走り高跳び、走り幅跳び、棒高跳び、やり投げ▽女子=100メートル、400メートル、800メートル、1500メートル、100メートル障害、400メートル障害、3000メートル障害、走り幅跳び、やり投げ

※無観客での開催。種目が変更になる場合もあります。

【大会HP】http://goldengrandprix-japan.com

【テレビガイド】TBS系列全国ネットで午後3時から生中継。また、TVer、TBS FREEにて午後1時からライブ配信。