全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)は来月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。5連覇を狙う旭化成、マラソン東京五輪代表の中村匠吾(28)を擁する富士通、同じく東京五輪代表の服部勇馬(27)がエースのトヨタ自動車が3強と言われている。

トヨタ自動車は服部が1万メートル27分台を連発するなど、スピードに進境を示している。窪田忍(29)、西山雄介(26)、青木祐人(23)も27分台を出し、選手層の厚さは旭化成に匹敵する。

服部がさらなる成長を見せている。東京五輪の1年延期を受け、五輪本番でも重要になるスピード向上に取り組んだ。7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ網走大会で27分56秒32、9月の全日本実業団陸上で27分47秒55と1万メートルで今季日本最高(当時)を連発した。

服部は「マラソンと同じフォーム」で走れたこと、「カロキさんのおかげ」だったことを強調した。

1万メートルの走行中の動きをマラソンに近づけること、さらにはマラソンの動きをジョグに近づけること。そのためのトレーニングをずっと続けて来た。

その動きの中でもスピードを出すために、今年DeNAから移籍してきたビダン・カロキ(30)と一緒に練習を行った。カロキは五輪と世界陸上の1万メートルで5回入賞している世界トップランナーであり、マラソンも19年シカゴマラソンで2時間05分53秒で走っている。

「カロキさんを見て、たくさんのことを感じました。お酒は飲まないし日曜日の朝も自主的に走っています。日々の取り組みが違いました。一緒にトレーニングすることで、2分48秒が速いとは感じなくなりました」

1000メートル2分48秒は1万メートル28分00秒のペースである。服部のスピード強化はマラソンのためだったが、トラックに近いスピードが要求される駅伝にも大きなプラスとなる。

服部は出場を予定していた12月6日の福岡国際マラソンでは、日本記録(2時間05分29秒)とほぼ同じ「2時間05分30秒」を目標としていた。残念ながら11月末に右脚の腓腹筋(ふくらはぎ)を痛め、福岡は欠場を余儀なくされた。

だが12月10日には医師から許可が出て、ニューイヤー駅伝に向けて練習を再開した。12月30日に発表される区間エントリーに服部の名前があれば、完全な調子に戻っていると見ていい。今のトヨタ自動車は不安が残る服部を起用するより、他の選手で戦った方が強いからだ。

今季、服部と並ぶエースに成長したのが西山である。前回のニューイヤー駅伝3区(13.6キロ)で区間賞を取り、10月には27分56秒78とトラックのスピードにつなげた。「3区は力感のない、効率的な走りができました。次はもっとレベルの高い走りをして優勝に貢献したいです」

服部が完全でなければ西山が、エース区間の4区(22.4キロ)候補だった。

だがそこに、窪田が復活して加わってきた。窪田は入社1、2年目の15、16年に4区を連続区間3位で走り、トヨタ自動車の2連勝を支えたランナーだ。

だが17年は故障で低迷し、復活を期した18年のマラソンではレース中に転倒するアクシデントに見舞われた。

「見ていて厳しいかな、と思ったこともありました」と佐藤敏信監督。「しかし本人の、もう1回戦ってやる、という気持ちが強かった。よく乗りこえてきてくれました」

11月に27分55秒07と自身6年ぶりの27分台をマークし、5年ぶりの4区出場の可能性も出てきた。

服部、西山、窪田にキャプテンの大石港与(32)も含めた4人が、主要区間の3、4、5区(15.8キロ)を分担するだろう。1区(12.3キロ)候補がマラソン2時間7分台の藤本拓(31)と、1万メートル27分台の宮脇千博(29)だったが、12月の日本選手権で27分58秒63を出した青木も加わってきた。

トヨタ自動車の15年以降のニューイヤー駅伝順位は1位・2位・3位・3位・2位。佐藤監督も選手も、全員が「1位しか考えていない」と言い切るチームである。

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