12年ロンドン五輪400メートルリレー代表の市川華菜(30=ミズノ)が、現役最後の100メートルを完走した。100メートル予選1組に登場して、追い風1・4メートルの条件下で12秒42。同組5着で予選敗退となった。最後はグラウンドに一礼した。16日に今大会が最後のレースになることを発表していた。

「陸上人生で最後の100メートル。本当は速いスピードで終えたいという気持ちがあったけど、心が体が一致していなくて。100メートル走りきれないかもと思っていた。ゴールできて安心しています」。アキレス腱(けん)痛を抱えた状態で、最後まで完走。時折、涙で言葉につまりながら、笑顔で言った。

市川は12年ロンドン五輪に出場。17年日本選手権では100メートル、200メートルで2冠を達成した。「100メートルは本当に難しい種目。私の場合は200メートル、400メートルを走ってやっと100メートルが形になった。一番苦労した、難しい種目でした」と振り返った。

人気と実力を兼ね備えて、華のあるスプリンターだった。ただ最近は本調子にはならなかった。市川は「一昨年、不意に、いつもなら、けがをしても頑張れる、あきらめない、と思うところで、本当に不意に、何かが切れた。感情がなくなってしまって。何を目標にすべきか考えられない」。ただ支えてくれた周囲に感謝を示すためにも「中途半端で終われない」。今春には今シーズン限りでの引退を心に決めて、競技と向き合ってきた。

今後については未定とした。「こんなに陸上ができて…。小さい頃はここまでやるとか、五輪に出るとか思っていなくて。大学で自分の可能性を教えてもらった。誰がどうなるか、は誰にもわからない。だからできることならば、これからも陸上に携わっていきたい。子どもたちの可能性を見いだしたいと思います」と目を輝かせた。