47年ぶりの快挙を成し遂げた。新潟アルビレックスRCの郡菜々佳(25)が12日まで行われた陸上の日本選手権(大阪・ヤンマースタジアム長居)で、円盤投げ、砲丸投げの2種目で優勝。75年大会の林香代子以来の2冠に輝いた。

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郡は念じた。「思い切ってやるぞ!」。12日に行われた砲丸投げの6投目、最後の一投。4キロの砲丸を首元にかかえ込み、反転しながら宙に放った。「気持ちで投げた」と15メートル57をマークし、逆転で2年連続5度目の優勝。9日の円盤投げと2種目での日本一の快挙を知ると、「おお~! 光栄です」と目を丸くして喜んだ。

小学校で水泳、柔道に打ち込んだ。大阪市立淀川中で「足が速くなるかな」と思って陸上部に入部。監督の勧めで投げた一投が転機だった。「砲丸がすごく飛んだんです」。東大阪大敬愛高で円盤投げも始め、両立してきた。「下半身からの力をうまく物体に伝えられる」と自負する特技で、国内投てき界で存在感を増してきた。

「やめたいです」。九州共立大院の恩師、疋田晃久監督に突然告げたのは昨冬だった。仲が良い同期が辞め、就職先も決まらない。急に先が見えなくなった。「競技を辞めている自分がイメージできるか」。問われ、数日後「できないです」ととどまった。その後、新潟アルビレックスRCが所属に手を挙げてくれた。4月から新社会人となり、「支えてくれている方々のおかげです」と感謝する。

いまは円盤投げに重点を置いており、砲丸投げとの練習比率は9対1だという。それでも、絞る気はない。世界の円盤投げのトップ選手は、砲丸投げでも好記録を連発している。「下からの動きは円盤にも生きている」と2種目で戦い続ける。同監督も「馬力が違うが、まだポテンシャルで投げている」と技術向上の伸びしろに期待する。

「まだまだ精神的にも体力的にもパワーアップして、この感じで積み重ねていくことできれば」。快挙の先に、世界を見据えた。【阿部健吾】