大松由季(27=サンドリヨン)が日本女子6人目の12秒台となる12秒97(追い風2・0メートル)で初優勝を飾った。「12秒台が出るんじゃないかなと思っていました。競り合えながら出せたのは正直にうれしいです」と笑みをたたえた。
長良川から吹く強い風を背に、中盤以降で前へ出た。「後半シーズンは(レースの)後半でグッと伸びて、リズムが刻めていた」と自信があった。正式結果がアナウンスされると、同じ広島出身で日本記録保持者の福部真子(27=日本建設工業)らからたたえられた。
今季は7月下旬に13秒09(追い風1・4メートル)をマークするなど、タイムのアベレージも向上。飛躍の要因は「環境を変えたこと」と説く。昨年まではアルバイトする傍らで競技を続けてきたが、今年は午前にトレーニングし、午後に美容サロンで勤務。ハードルを10台並べたメニューなどを通じ、より実戦的な練習も増やした。「しっかり陸上に打ち込めるようになったのが一番」とメリハリがつけられるようになった。
ここまで競技を続けられたのは「陸上が好き」という思い。「社会人になった今も続けているのは、陸上が好きで、走っているのが好き。そこが一番です」。明るい表情で「この感覚を忘れないようにしたい」と声を弾ませ、「来年のパリ五輪を目指しています」と誓いを立てた。
13秒04で2位となった前回覇者の福部は「今年最後のレースだったので、しっかりまとめて走れればいいのかなと思ったが、なかなか自分のタイミングをつかめていない」と反省の言葉が並んだ。今季は世界選手権(ブダペスト大会)の参加標準記録を突破しながら、6月の日本選手権で4位となり、代表入りを逃した。「世界選手権に出られなかったことは重く受け止めている。6月までに自分が仕上げられなかったことが事実」と胸に刻む。7月からは欧州転戦も敢行。「12秒5台を出す練習」に励む中「まずは着実に7台、8台がいつどんな状態でも出せるように基盤作りをやっていきたい」と見据えた。
ブダペスト大会に出場した田中佑美(24=富士通)は13秒10で4位。日本女子の争いが激化する中、さらなるレベルアップを目指す。「自分は次の段階として、(12秒)7台、8台をコンスタントに出していく能力が必要だと感じている。自分の地力を引き上げていく必要があると感じている」。今後は29日から始まるアジア大会(中国・杭州)に出場する。