男子100メートル予選にサニブラウン・ハキーム(26=東レ)が出場する。2大会連続入賞中の日本のエースの「食」を支えているのが、専属シェフの植松宏太さん(27)。アスリートの栄養サポートを手掛ける「AND-U」に勤め、今年5月から担当となった。トップスプリンターの姿を間近で支えてきた。
植松さんは約4カ月にわたって、食を支えてきた。拠点とする米フロリダでの練習期間中は、サニブラウンの家に住み込みながらサポート。必要なエネルギー量や栄養素を計算しながら食材を調達し、1日3食の献立を練ってきた。
陸上選手のサポートは初めてだったが、不安や緊張を解いてくれたのはサニブラウンだった。植松さんは「とてもやりやすいです」と笑顔でうなずく。
風通しよくサポートができているのは、サニブラウンが丁寧に感想や意見を伝えてくれるから。「気温が上がると食欲が湧かなくなるけど、冷たい麺類だったら食べられます」「チキン南蛮の衣はカリッとしていて、タルタルソースはもったりしていたほうが好きです」。自分の好みや体の状況を事細かに説明してくれるため、「次にどんなサポートをすればいいのかが分かりやすい」と感謝する。
特に喜んでくれたのは回鍋肉。7月上旬の日本選手権直前に夕食で提供すると「これ、おいしいですね!」とすぐに伝えてくれた。「料理の感想も素直に言ってもらえるので、とてもうれしいです」と実感を込める。
今月上旬の宮崎合宿では、世界選手権へのエールを込めて「特製ちらしずし」を振る舞った。「カニカマをトラックに見立てました。真ん中にはきざみのりで『世陸2025』とデコレートしてみました」。にぎやかなプレートを見るなり「すごいですね!」とうれしそうな笑みを浮かべていたという。
そんな植松さんには、サニブラウンから贈られた「宝物」がある。
それは宮崎合宿のある日のこと。「ぜひ使ってください」と重みのある袋を渡された。「何だろうと」と開けると、そこにはジーンズ生地のエプロンが入っていた。
日々のサポートへの感謝を込めたプレゼントだった。
「こんなプレゼントをいただいたのは初めてです。すごくうれしかったです。仕事のモチベーションになりました」
優しい心配りに、胸が温かくなった。
サニブラウンは今大会で100メートル、400メートルリレーの2種目に出場する。100メートルの予選は開幕日13日の午後8時35分に号砲が鳴る。
側で支えてきた植松さんは「今までやってきたことを精いっぱい発揮して、後悔のないよう走ってほしいです」と願っている。【藤塚大輔】

