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全日本実業団女子駅伝2016

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吉川美香×小林祐梨子 女子中距離レジェンド対談 後編

 陸上の日本選手権女子1500メートルで5連覇し、12年ロンドン五輪に出場した吉川美香(32)。1500メートルの日本記録保持者で08年の北京五輪代表の小林祐梨子(27)。過去に全日本実業団対抗女子駅伝にも出場経験のある中長距離界のレジェンド対談が実現。第2回のテーマは「日本の女子中長距離は東京五輪に向けてどうすべきか」。女子陸上界の現状と2020年に向けた提言、さらには今後の願いを熱く語った。(敬称略)

1500メートルで五輪に出たかった

--小林は08年北京五輪に5000メートルに出場し予選1組で15分15秒87の7着。一方、吉川はロンドン五輪の1万メートルを31分47秒67で走り16位、、5000メートルでは予選2組で15分16秒77の13着だった。大会を振り返り、2人は複雑な心境を吐露した。

陸上競技への熱い思いを語る小林
陸上競技への熱い思いを語る小林

小林 陸上やってきた中で、何か後悔があるかといったら、やっぱり1500メートルで五輪に出たかったことかな。

吉川 私も祐梨子ちゃんのように、当時は1500メートルで五輪で戦いたいという思いはすごくありました。

--ともに国内では1500メートルで実績を残してきたが、世界で戦うためにあえて距離を伸ばした。

小林 小学校の卒業アルバムに、8年後の08年に「オリンピックに絶対出る」と夢を書いたんです。それをどうしてもかなえたかったんですよね。距離を伸ばさないと、勝負できなかった。正直、やりたくなかった部分もあったけど、5000メートルの方が五輪へ行きやすいと思ってやりました。

吉川 北京五輪でタイムが足りず、1500メートルで出られなかった。ヨーロッパでの遠征でタイムの壁を破ろうとしたけど、ヨーロッパの選手と走ってみて、ラスト500メートルのスピードでかなわないと感じたんです。それで私も距離を伸ばした。日本人が五輪に近いのは5000、1万メートル。そこできっぱり全日本選手権の6連覇を放棄して移行しようと。1500には出なければ、連覇のことを考えなくて済むし、5000、1万メートルに集中できると自ら思ってやりました。

スピードと持久力がないと世界とは戦えない

--リオ五輪の400メートルリレーで銀メダルを獲得し、注目を浴びる男子に対し、女子陸上界は低迷が続く。メダルは04年アテネ大会のマラソンで金を獲得した野口みずきが最後。女子5000メートルで上原美幸(20=第一生命)が同種目20年ぶりの決勝進出を決めたものの、トラック競技に限れば、1928年アムステルダム大会で800メートル銀メダルの人見絹枝まで、さかのぼらないとメダルを獲得していない。20年の東京五輪へ向けて、世界と勝負するために必要なことは何だろうか。

「陸上の聖地を作るべき」と話す吉川
「陸上の聖地を作るべき」と話す吉川

吉川 スピードと持久力の両方鍛えないといけない。マラソンもそうだと思うんですけど、スピードがないことには、どの分野でも戦えないと思うんです。スピードと持久力を別々にトレーニングすることで、併せ持ったものをレースに持ち込める。2つの走りを取り込めたら、少しは近づけるのかな。

小林 日本人はタイムを求めすぎている気がする。でもタイムが出るのはペースメーカーがいて、一定のペースで走った時です。海外勢とのレース本番はスピードのアップダウンを繰り返してペースに波がある。だから、日本人は対応できない。ペースの変化に対応できる練習をもっとしないと。五輪でも先頭集団がペースを上げたり、下げたりする。でも日本人だけは機械のように一定で走っているんですよね。

吉川 たしかにそうだよね。世界レベルのレースではペースを上げたり下げたりが当たり前です。日本人は一定で走ることは得意。たしかに一定で走るのは楽なんですが、でも一定のスピードで走るとアフリカ勢にとってはもっと楽になるんですよね。そういう意味では変化に対応できないといけないよね。

小林 でも不思議ですよね。陸上のノウハウや道具は進化しているはずなのに、トラックだけでなく、マラソンでも何で高橋尚子さんとか野口みずきさんのようなタイムが生まれなくなっているのか。私は現役時代、フルマラソンは走ってないですけど、一般目線で思ってしまいます。

--5000メートルや1万メートルでも1500メートルを走るようなスピードは必要ですか?

2008年北京五輪陸上女子5000メートル1次予選第1組 先頭集団についていく小林祐梨子=2008年8月19日
2008年北京五輪陸上女子5000メートル1次予選第1組 先頭集団についていく小林祐梨子=2008年8月19日

吉川 小林 はい。必要だと思います。

吉川 私の場合、極端な言い方ですが、1500メートルをほぼ無酸素で走っているような感覚でした。それを続けていると5000メートルや1万メートルを走るのは楽に走れます。リオオリンピックの女子1万メートルで世界新を出して金メダルを獲得したアヤナ選手(エチオピア)のラストの周回は1500メートルのスパートをしているようなスピードでした。そういう意味でも中距離選手の持つスピードがないと今の世界の長距離界では勝てないと思います。

--海外勢とのレースでは実力以外の面でも、世界との大きな差を痛感させられた。

2012年ロンドン五輪・8日目・陸上・女子1万メートル決勝 スタート後、先頭を走る日本勢。2番目が吉川。先頭は新谷仁美、3番目が福士加代子=2012年8月3日
2012年ロンドン五輪・8日目・陸上・女子1万メートル決勝 スタート後、先頭を走る日本勢。2番目が吉川。先頭は新谷仁美、3番目が福士加代子=2012年8月3日

小林 当時、海外勢と走ると遊ばれている感じがしました。

吉川 どんなにつっこんで走っても、彼女たちからは「ラストで抜くから」と思われているよね…。

小林 分かります。

吉川 1500メートルや800メートルの中距離種目は走る格闘技と言われてますけど、ゼッケンを捕まれて、3レーンまで飛ばされたこともある(笑い)みんなラストでいい位置が欲しいから。体強くないと転ばされるんだなと思いました。私は小さい(身長155センチ)ので、1500メートルで海外勢に対抗するのは難しいとも感じました。

「陸上の聖地」を作って欲しい

--今後の陸上界の発展に何が必要だろうか。

吉川 Bリーグ(バスケットボール)の開幕戦を見ましたが、あの試合はコートにプロジェクションマッピングを施して見ていて楽しかった。やり方は違うと思いますが、もっと楽しく陸上を見てもらえる工夫をしてもいいのかなと感じます。

小林 ある陸上の大会で、ジャニーズの方がテレビの仕事で来てた。そしたら、お客さんにたくさんの女の子が来てた。「これ何の大会や」って(笑い)でも、そういうことも必要かなと。あとやっぱり、一番の効果は活躍すること。男子陸上の400メートルリレーで銀メダルを取ってから、注目度がすごく高くなった。やっぱり違うんだと思いましたね。

吉川 あとは本当に「陸上の聖地」を作って欲しいです。陸上の聖地が出来たら、憧れの場所になって人も集まると思う。今は大きな大会でも、開催地がバラバラで「今年はどこ開催だっけ」となる(笑い)。日本選手権の開催地を毎年同じ場所にすることでそこが「陸上の聖地」になっていき、若い人たちがその場所を目指して成長できると思う。東京五輪に向けて作られる新国立競技場もサブトラックが常設でないのは…。東京五輪が終わってから、国際大会ができないのは厳しいですよね。

小林 とにかく陸上競技に興味を持ってもらいたいです。そのために私は陸上普及活動に力を入れていきたいと思ってます。【取材・構成=上田悠太】

 
◆吉川美香(よしかわ・みか)
 1984年(昭59)9月16日、神奈川・相模原市生まれ。神奈川・荏田高から03年パナソニック入り。06年から日本選手権1500メートルで5連覇。07年大阪世界選手権1500メートル代表(予選落ち)。12年ロンドン五輪では5000メートルと1万メートルに出場。1500メートルの自己ベストは日本歴代3位の4分10秒00、5000メートルは15分15秒33。13年2月に結婚を発表。現在はパナソニックでコーチを務めながら、2児の子育てに奮闘中。
◆小林祐梨子(こばやし・ゆりこ)
 1988年(昭63)12月12日、兵庫県小野市生まれ。兵庫・旭丘中1年から本格的に始める。須磨学園高時代の06年5月、国際GP大阪大会で4分7秒86と1500メートルの日本記録を樹立。08年北京五輪の5000メートルに出場。元陸上選手の男性と約13年の交際を経て16年3月に結婚を発表。現在はテレビ解説や陸上の普及活動を行っている。




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