11月21日、22日に“Sports Policy for Japan(SPJ)”が開催された。今回は10回目となる記念すべき大会。オンラインで開催された。

私は今回、審査委員として参加した。決勝に残った8チームを審査した。審査委員は全部で8人。審査委員長を務めた早稲田大学の中村好男先生始め、そうそうたる顔ぶれだ。スポーツ界に尽力されている方ばかり。私がこの方たちと名前を並べられるのは恐縮だったが、光栄なことでもあった。みなさんとはいろんな場面で御一緒させていただくことがあったので、オンラインでも支障なく審査を共にすることができた。


今年のSPJはオンライン開催
今年のSPJはオンライン開催

この「SPJ」を少し説明しようと思う。第1回から主催している笹川スポーツ財団によると、日本のスポーツの現状や将来について問題意識を持つ大学3年生が所属の枠を超え、政策提言を持ち寄り、意見を交換と交流を図る場とされている。

私はこういう場所は本当に大好きで、大学院ではスポーツマネジメントを専攻したので、スポーツ政策に関する議論はわくわくする。しかも、学生がこの課題に向けて準備し、発表するというのは私自身も発想の勉強にもなる。

今回からは、Sports Policy For Japan企画委員会日本スポーツ産業学会の共催、笹川スポーツ財団、大学スポーツ協会(UNIVAS)の後援で行われ、21大学、54チーム、274人が参加した。コロナの影響で参加者数が心配されていたが、2019年度の24大学、61チーム、327人と比べても、例年と変わらぬ数だったといえる。

予選である分科会の資料を事前に拝見してはいたが、私が発表を聞くことができたのは、以下の決勝進出8チームだ。


四国大学「『スポーつながリズム』が描く未来図~大学アスリートと農家の共生~」

順天堂大学「スポーツを通じた地方創生-鹿嶋市を元気にする『鹿の子プロジェクト』-」

立教大学「防災強化に向けたBSL(Bousai Sport Leadership)アカデミーの提案~防災×スポーツ×リーダーシップ~」

順天堂大学「障がい者スポーツ×教育で築くダイバーシティ社会の実現」

明治大学「移住促進におけるJリーグ活用法の研究-Jクラブウェルカムカフェの設立-」

一橋大学「子どもの健康促進のためのオンライン子ども食堂~コロナ禍で見えた新たな『居場所』作り」

順天堂大学「規格外野菜≠食品ロス!~必要とされるプロスポーツチームの認知度と発信力~」

立教大学「男性育休休業取得に向けた(子育てパパおうえんプロジェクト)の提案」


どれも一生懸命考えられていて、もちろん結果(アウトカム)も大事だが、そこまで調査し、ステークホルダーへのヒアリングなど、さまざまな調整もあっただろう。そこで自身がその課題に向けて努力する姿を想像して、この経験が学生生活の大事な一部になるだろうと私は思いをはせた。

審査をするのは冒頭にも記載したが、素晴らしい方ばかり、その道のプロフェッショナルばかり。オンラインとはいえ緊張しない環境ではないはずだ。発表時間は15分きっかり。基本的には時間厳守。タイムキーパーも大事な仕事だ。

私が一番、印象に残っていることがある。こういう場では当たり前の態度かもしれないが、厳しい質問を受けた際も「ご質問ありがとうございます!」と言える学生たちは本当に素晴らしいと感じた。

私も大学院の学生時代、幾度となく心が玉砕されることがあった。3週間ごとの発表のたびに厳しい指摘もあった。大学の試験でもそうだ。でもその時学んだことがあった。「批判的な意見は素晴らしい論文を生む」という言葉だった。批判されると、悲しいし、落ち込む。ただ、そのあとに指摘された部分を調べ、自分のリサーチが足りなかったと立ち直る。この繰り返しだった。


SPJのオンライン発表の様子
SPJのオンライン発表の様子
最優秀賞はこの大学
最優秀賞はこの大学

今回のSPJ。審査員たちの議論の末、最優秀賞は四国大学に決定した。自身が住む徳島県が全国2番目の百貨店ゼロ県という危機感から臨んだこの研究。地方創生が課題とされている日本にはどの県にもこの課題は共通するであろうと感じた。またこの研究をしたのが、大学アスリートであり、スポーツ×農業という内容だったことから、この研究をシェイプしていけば、ビジネスモデルにもなるであろうという期待も込めて最優秀とした。

学生の「一生懸命」に感激した1日になった。同時に若者の能力を引き出すことも改めてしっかり大人が考えていかないとなと感じた。貴重な機会をありがとうございました。

(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)