今月2日。パリ・オリンピック(五輪)の最終選考会となる世界水泳ドーハ大会が開幕した。日本からは男女合わせて10名の選手が出場している。
会場となっているのは「ハマド・アクアティクスセンター」。連日、たくさんの国の選手たちが「夢の舞台」への切符をかけて熱い戦いを繰り広げている。
5日に行われたのは、女子10メートル個人。
この種目には、荒井祭里(JSS宝塚/滋賀県スポーツ協会)と金戸凛(日大/セントラル)が出場した。荒井は、昨年に福岡で行われた世界水泳で既に五輪の内定を決めている。そのため、今大会はのびのびと演技が出来るのではないかと予想していた。荒井の持ち味は「安定感」。その武器を生かし、順調に飛び進めていった。しかし3本目で大きく失敗。その後は立て直す事ができず、まさかの予選落ちとなってしまった。
そんな中、金戸は5本の演技をうまくまとめ15位で準決勝へ進出。悲願である五輪へ望みをつなげた。パリの内定をもらうには、今大会で「決勝12位以内」に入る事が絶対条件。たび重なるケガで何度も心が折れそうになった。それでも何とか夢を諦めず、今大会の出場権を掴み取った。その想いと共に、準決勝へ。身体はよく動いていた。しかし、オリンピック出場をかけた最初で最後のチャンス。プレッシャーを感じない訳がない。画面越しではあったものの、表情からは緊張感がひしひしと伝わってきた。
そして、その気持ちがそのまま演技へと出てしまった。結果は13位。あと一歩のところで決勝へ進む事ができなかった。12位との差はわずか2・05点。悔やんでも悔やみきれないほどの結果に涙が止まらなかった。
「親子3世代でのオリンピック出場」その夢は、男子10メートル個人に出場する兄の金戸快(セントラルスポーツ)に託された。
そして、6日に行われたのは女子10メートルシンクロ。荒井はこの種目にも、長年のパートナーである板橋美波(JSS宝塚/滋賀県スポーツ協会)と共に出場した。「板橋をパリに連れて行きたい」。その一心でこの日まで頑張ってきた。
オリンピックのシンクロ種目は、8組での1発決勝となっている。既に福岡での世界水泳で出場枠を決めている4カ国を除くと、残るは4枠。何としてもその1枠を掴み取りたい。その強い思いを胸に10メートルに立った。5本全てを完璧に決めれば可能性は十分にある。集中力を高め、2人で息を合わせながら1本1本飛び進めた。しかし、周りの選手のレベルが前回より上がっていた。大きな失敗は無かったものの、最後までライバル国との差を埋めることは出来なかった。結果は9位。東京五輪に続くパリ五輪出場の夢は叶わなかった。悔し涙を浮かべる荒井。しかし、その横にいた板橋は、現実を受け止めているかような冷静な眼差しだった。どこか、やり切ったようにも見えた。
選手たちは、オリンピックという目標に向かってさまざまな困難を乗り越え、この場所に立っている。その先にある目標が叶うか分からない。それでも、とにかくやるしかない。
思い通りの結果ばかりではない。しかし、出てしまった結果をどのように未来に繋げるかも大切なことだ。
どんな結果でも、一生懸命に努力してきた日々が生きる時はくる。その時がくるまで、また新たな目標を持ち頑張ってほしいと思う。
世界水泳ドーハ大会は、まだまだ続いている。ぜひ、パリ五輪をかけて戦う日本の選手たちに、引き続き温かいエールを送ってほしい。
(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)