今年もまた、雑草がたくましさを増す季節になってきた。京都の碁盤の目。その外れ、神山に生える雑草は、夏の強い日差しを浴びて成長し、秋に踏まれて強くなり、冬にラグビーファンを魅了する。

大阪から電車を乗り継いで約2時間。10月7日に、滋賀県東近江市の布引グリーンスタジアムであった関西大学ラグビーの京産大-同大は、開幕節ではなかなか見られない好ゲームだった。

19年W杯に向けた改修作業中の花園ラグビー場が使用できず、さらに台風の影響で1週間遅れの開催となったことで、試合前には協会職員が「(開催する)場所が見つからんかったんやあ」とぼやいていた。山に囲まれたのどかな街並み。そこで繰り広げられた一戦は、残り1秒まで勝負の行方が分からない展開になった。

後半39分にFW戦から京産大がトライを奪って26-26の同点に追いつき、ゴールも決まって逆転。3分間のロスタイムは、同大が果敢に攻めた。PGでも再び試合がひっくり返る。反則さえ許されない、緊迫した時間を耐え、関西のライバル対決を制した。

たたき上げは京産大の代名詞でもある。無名選手を鍛え、SO広瀬佳司、WTB大畑大介、SH田中史朗、ロック伊藤鐘史(現FWコーチ)ら多くの日本代表を輩出した。過酷な練習は有名だが、今年はそれに輪を掛けて厳しいようだ。

13年から就任した元日本代表CTBの元木由記雄ヘッドコーチ(HC、47)は「僕が来てから一番(スクラムを)組んだ。相当、やってきてます」と明かす。

5月の対戦では12-42で同大に完敗。そこから危機感が芽生えた。

3軍にあたるCチームでくすぶっていたFB栢本(かやもと)光(3年、天理)は、かつてキックの名手として日本代表を支えた広瀬が練習に訪れた際に、指導を受けて急成長した。同大との開幕戦が大学入学後初の公式戦だった栢本は、全てのキックを成功させた。

「広瀬さんからは『蹴る』のではなく『運ぶ』ようにキックをするんだと教えてもらいました。今も元木さんに言われて、毎日必ず、50本はボールを蹴っています」

レギュラーを奪い取ったプロップの岡留圭吾(4年、常翔学園)は「スクラムを組むたびに、過呼吸になるくらいまでやりました。辛すぎて、ほとんど、意識が飛んでいることもあった。試合に出たかったんで」と笑いながら話した。

負けては一緒になって悔しがり、勝っては部員とともに涙する大西健監督は「弱かったスクラムが、よう成長してくれた。岡留は毎回、もどしながら(スクラムを)組んでいたからね。泣きながら、やっていた。栢本はCチームで腐っていたけど、夏合宿から出てきた。誰でも頑張って、努力を続けていれば、チャンスは必ず来ることを体現してくれた」と褒めた。

98年度以降、関西リーグ優勝から遠ざかってはいる。それでも、大学選手権は2年連続で8強進出。昨年度は準優勝した明大に後半20分すぎまでリードし、21-27の大接戦を演じた。

「努力は才能を凌駕(りょうが)する」-。

今季は史上最多を更新する大学選手権10連覇を目指す帝京大と、明大、天理大が3強の構図。秋にもまれた雑草軍団が、冬に強者を倒し、大学ラグビー界を盛り上げることができるか。今年も、楽しみな季節がやってくる。【益子浩一】