目の前に映し出される光景の、尊さを再確認した。

15日に大阪で開幕したフィギュアスケートの世界国別対抗戦。2年に1度行われる団体戦だ。日本の他にロシア、米国、フランス、イタリア、カナダが参加。新型コロナウイルスの影響で、19年大会と同じようにはいかない。観客数には制限が設けられ、ペン記者も現地取材は1社1人。写真も代表撮影となっている。

福岡で行われた前回大会は、現地で取材を行っていた。2年前を思い返しつつ、今大会の初日は、会社で映像を見ながらオンライン取材に入った。現地取材を複数人でできないもどかしさを感じながら、海外の選手たちの声を聞いていた。そこで印象に残ったコメントを、いくつか挙げたい。

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◆アイスダンス

ガリアビエバ&トーロン(フランス)

「会場に入ってすぐに『本当に人がいる! すごいことだ!』と思いました」

ソシーズ&フィラス(カナダ)

「2人のコーチ以上の大人数の前で、長い間、演技をしていなかった。とても楽しかったです」

ハワイエク&ベーカー(米国)

「本当に私たち、ずっとずっと『日本でまた演技がしたい』と待ち望んでいました。最後に日本で滑ったのは世界選手権(19年、さいたまスーパーアリーナ)。日本で滑ることは、選手生活の中でも最高の経験です」

◆女子シングル

シェルバコワ(ロシア)

「世界選手権は無観客でした。日本はフィギュアスケートに対して、とても関心が高い国と理解しています。その応援を受けて、演じることができました」

トゥクタミシェワ(ロシア)

「日本に来ることができて、大変うれしい。日本の匂いを感じる。それがとてもうれしい」

◆男子シングル

ブラウン(米国)

「スケートをするのが楽しい国に、長く来られなくて苦しかったです。これだけのいい思いができる、日本に来られて良かった。今日の演技は日本のファンの皆様のためのものでした」

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思い返せば今季、グランプリ(GP)シリーズは「母国か練習拠点国、および近隣国の大会に出場」と制限があった。3月の世界選手権は無観客開催だった。

世界から選手が集い、観客が、その背中を押す-。

あらためて考えてみると、今季のフィギュア界において初めての光景がシーズン最終戦で広がっている。もちろん、最も大切なのは新型コロナウイルス対策。昼夜問わず難題に向き合い、運営に尽力する人たちへの感謝を胸に、最後まで取材を続けたい。【松本航】


◆松本航(まつもと・わたる)1991年(平3)3月17日、兵庫・宝塚市生まれ。武庫荘総合高、大体大ではラグビー部に所属。13年10月に日刊スポーツ大阪本社へ入社し、プロ野球阪神担当。15年11月からは西日本の五輪競技やラグビーが中心。18年ピョンチャン(平昌)五輪ではフィギュアスケートとショートトラックを担当し、19年ラグビーW杯日本大会も取材。

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演技を終え笑顔で拍手に応えるアンナ・シェルバコワ(代表撮影)
演技を終え笑顔で拍手に応えるアンナ・シェルバコワ(代表撮影)