国内女子ゴルフツアー、リゾートトラスト・レディース(5月27~30日)は勝みなみ(22=明治安田生命)の2年ぶり5度目の優勝で幕を閉じた。勝のキャディーを務めたのは母の久美さん(54)。優勝後に話を聞くと、娘である勝へのサポートはキャディー以外にも数多くあり、プロスポーツにおける家族の支えの重要性をあらためて感じた。 もともと久美さんは地元の鹿児島県内で教師として働いていたが、プロとして歩み始める娘のために仕事を辞め、サポートに専念。今はキャディーをしない大会でも常に同行し、車での送迎なども行っている。遠征先には炊飯器を持ち込み、勝がラウンド中に食べるおにぎりも握る。今大会の最終日では地元鹿児島のカツオでんぶをまぶしたものと梅の果肉を入れた特製おにぎりを5個ほど持たせ、優勝の原動力とした。

キャディーを行わない大会ではラウンド中の時間に洗濯などを行い、将来の米ツアー挑戦を見据えて、自身も英会話の勉強に励む。体力をつけるため、昨年1月からは娘と同じく週3度の筋力トレーニングに通い、体も鍛え始めた。「最初は首が回らなくなって」というが、徐々に効果も感じるようになり「しゃがんだり、立ったりの『よっこらしょ』というのが減ったかな。長生きしそうな感じがします」と笑う。大会第2日は順延した第1日分と合わせた33ホールのラウンドとなったが、見事に完走。これには娘の勝も「バッグも重いのに、ケロって感じで。私よりも疲れてない感じですごいなと思いましたね」と驚いていた。

母がキャディーを務めるのは今季3度目だったが、その理由のほとんどはプロキャディーへの依頼などがうまくハマらずに空きとなった時。久美さんはもともとゴルフに詳しくないため、技術的なアドバイスはほとんどしない。今大会では勝負どころでパッティングのラインや風向きなどを聞かれることもあったというが「私はわからないので。本人が言ったことに『そうだね、そう思うよ』と。読むふりをしたり、雰囲気だけ一生懸命やっていれば、意外とうまくいったりする。そういうのって大事なんだなと思いました」と振り返る。母なりに見いだしたマネジメント論だった。

車の送迎などを両親や関係者に担ってもらっている選手は多く、特に女子になるとその割合は増えるように感じる。他選手で言うと、今年の初戦を制した小祝さくらの母ひとみさんは試合会場に頻繁に顔を出しており、昨年から米ツアーに本格挑戦していた河本結も4月の渡米時には母親も同行していた。リゾートトラスト・レディースで2位に入った吉川桃も、父親は栃木県内でイチゴ農園を営んでいたが、各地を転戦する娘の同行サポートが必須になってくると、農園を辞めてハウスクリーニング業へと転職。今では桃とプロテスト合格を目指す妹のくるみの2人を両親が分担しながらサポートしているという。

ゴルフはアマチュアでも遠征などでの宿泊費やエントリー料は安くなく、加えて車の運転も必要になってくるため、両親ら家族のサポートは必須と言える。そうした必死の支えの先に、プロテスト合格やツアー優勝などが待っているのだ。勝は母の支えについて「朝早く起きておにぎりとかも握ってくれているし、運転も試合後のトレーニングとかにも連れて行ってくれる。すごい大変だと思いますが、そうしたことも言わずに付き合ってくれているので本当に感謝しています」と語った。

生き残るには結果を残すしかない厳しい世界。選手はもちろん、周囲で支える家族の覚悟も相当なものだとあらためて感じた。【松尾幸之介】